Saturday, February 02, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 2

DP3 Merrillサンプルギャラリーの解説の続きです。セイケさんの写真のあとに、僕の撮った写真を同列で並べていいのかっ!という声なき声がアタマの中を駆け巡り、さんざん逡巡しましたが(汗)、セイケさんの写真以外にも、皆さんが見たいと思うシーンも、それなりに載せた方が喜んでもらえるだろう…と自分に言い聞かせつつサンプルギャラリーに写真を掲載しました。

「DP3M-08」番以降の僕の撮った写真の持つ色調やトーンが、セイケさんの写真と近いのは、セイケさんが撮影されている合間を見ながら撮っているからです。時には僕が撮っている間、セイケさんに待っていただく、という状態もありました(滝汗)。でも、セイケさんは本物の紳士なので、ニコニコと笑顔で「いいの撮れた?」とか言ってくださるのです。なんか変な汗が出つつ、もう「んぎゃー」という感じでした(そんなプラハでの撮影記はまた書きます)。

そういうわけで、場所も近いところで撮っていますし、被写体に注がれている光の状態も、カタログやサイトにあるセイケさんの写真とほぼ同じ状況で撮っています。「もっと強い光だとどうなんだ?」というご意見もあるかと思いますが、プラハから帰国し、マクロの試し撮りを終えたあと、DP3 Merrillはシグマに返却してしまったので、ぱかーんとした快晴の下で撮るということがほとんど出来ませんでした。

さて、ではサンプルギャラリーの「DP3M-08」番以降の写真についても、メモを書いて行きたいと思います。

DP3M-08
プラハの左岸(お城のある側)の、日本大使館のところからカレル橋のたもとの方に抜けて行く途中に遭遇した光景です。燃えさかる炎や、強い風雪の痕跡。どういう歴史を経てこの壁はこんな表情になったのか。この街で繰り広げられた無数の人間模様を受け止めてきた壁。ただ朽ちているだけではない何かが僕に向かって語りかけてくるようでした。この壁のある場所は道が狭く、DP3 Merrillの画角では、正面からだとただの切り取りになってしまうので、斜めから構図にしました。絞りはF2.8開放です。街灯にピントを合わせています。こういうにぎやかな被写体の場合でも、きちっとフォーカスすれば、街灯がちゃんと浮き出ているように感じる。これはDP3 Merrillに搭載されたレンズが、良いレンズである証明でもあります。

DP3M-09
撮影場所は、建築家ジョセフ・ファンタ設計のアールヌーヴォー装飾で有名な、プラハ中央駅のホールです。少し前まではカフェが営業していたのですが、100年前に完成した当時の華麗さは失われ、今はもう廃墟同然となっていて、訪れる人もほとんどいません。撮影日は曇天で、向かい側にあるステンドグラスからの光も弱く(教会の中の光に近い感じです)、手持ちでの撮影を試みましたが、僕の力量ではブレを起こしていまうので、三脚を立てて撮影しました。絵としては肩の線にフォーカスを決めて立体感を狙い、奥の文字も読める程度にとF5まで絞りました。SIGMA Photo Proでの現像ではホワイトバランスを調整し、被写体の汚れが目立つ結果となりましたが、ほぼ現物に近い色を出す方向で現像しました。

DP3M-10
こういう俯瞰の全景図は「わかりやすいお約束の絵」とも言える一枚として、なんとか今回も撮っておかなきゃなと出発前からアタマには置いていました。撮影中盤にセイケさんが「今日は丘を登ってみようか」と仰ったので、汗をかきつつ坂を登り、さらに鉄塔の最上部まで上がってこれを撮ることが出来ました。1891年に作られたその鉄塔はエッフェル塔を模したもので1/5サイズで作られています。世界大戦中はソ連の電波塔としても使われ、チェコの厳しい歴史の一端の建物でもあります。さて、この塔の上から撮ったこの写真を見てみると、隅々までの微細さとも相まって、不思議な浮遊感も感じますが、実際に風に煽られて大きく揺れるという別の浮遊感の中で撮影しました(笑)。その揺れがブレにならないよう、シャッタースピード速めになるように、設定をISO100から200に変えました。絞りはF5.6です。この程度の日照具合でシャッタースピードが1/800秒ですから、おそらく日常で撮影するモードの感じかと思います。それにしてもこのDP3 Merrill 搭載のレンズ性能はすごいですね。中央部から周辺まで、びしっー!と一切の滲みを持たないこの描画。すべてが写ってますね。一眼レフや中版カメラを使っても、ここまでの描画は相当困難なのではないでしょうか。本当に驚かされます。

DP3M-11
プラハのトラムに乗って、窓越しに見る景色は、実際の目線よりも1mほど高いのでロケハンにはもってこいなのです。この日はトラムの17番に乗ってプラハ北岸を渡り、さらに北へと移動しながら、気になる場所を見つけたらメモっておいて、歩いて戻るというスタイルを試しました。途中、屋根が曲がったとても古い家を見つけたので、ヴォゾヴナコビリシの終着点まで登り、そこからゼンクロヴァ通りまで降りて来たところでセイケさんが撮影を始められました。人が住んでいると思えない古さでしたが、レースがかけられた内窓に花が飾られているのに気づき、セイケさんをほったらかして(汗)思わずこれを撮りました。花までに二枚の厚いガラスがあるので、あえて外窓から撮っているという構図で撮りました。絞りは開放F2.8でシクラメンにフォーカスしています。

DP3M-12
このベンチ、僕にとってものすごく重要な意味を持つベンチなのです。それはこの場所に行ってからセイケさんに教えてもらえたのですが、このベンチを撮られたセイケさんのプラチナプリントを僕は持っているのです。まさかプラハだったとは!このベンチなのか!と、思わず撮ったのでありました。セイケさんがこのベンチを撮られた時の逸話も聞かせていただいたのですが、それは胸に迫るお話でした(お許しが出たらまた書きます)。そんな裏側からの思いからか、この写真は露出を下げ、コントラストを強め、フォーカス部分を際立たせるなど、印象を強めるように現像でかなりパラメータを触っています。Photo Proをお持ちの方は、SPPからこのJPEGのEXIFを読み込んでみてください。ちなみにこのベンチの場所は僕だけの大切な秘密(笑)ということでお許しを。案外見つけやすい場所にありますので、どうかプラハに行かれたときに探してみてください。

DP3M-13
被写体はロレッタ教会の副門です。13番と14番は同じ場所で撮っていますが、13番は向かって右の副門です。F5.6で撮り、構図全体にフォーカスが来るように少し絞りました。色温度は素直に「日陰」で撮っています。ちなみに、これらの扉を僕が撮影しているとき、セイケさんは僕のすぐ後ろで天使の像にカメラを向けておられました。そして撮られた写真を見せていただいたら、天使の足の踵のところのクローズアップなのです。「ここに来ると、いつも天使が、どーせ僕たちは撮ってもらえないんだよねって言うんだ。だから、そんなことないよ、と、そういう気持ちになったんで撮ってみたんだよ」と仰るのです。このセイケさんの「心」に打たれてしまって、なんかもう泣きそうでした。

DP3M-14
この14番もロレッタ教会の副門ですが、これは入り口に向かって左の門で、赤い色が剥げてきている色と、その上の文様が13番の門よりも際立っていたので、扉に近づいて撮りました。13番よりも絞りを少し開けてF3.5で撮っています。現像でのコントラストは0.2程度とそれほど強めてはいませんが、ものすごい立体感を伴って記録されていて驚きです。SIGMAのカメラに搭載されているFoveon製Merrillセンサーは、こういう金属質のものを撮ると他にはない存在感を記録しますね。このロレッタ教会はプラハの代表的なバロック様式として有名で、観光客も多い場所ですが、僕たちの撮影は、そういった観光地を徹底的に避けながら進んで行きます。

と、ここまで書いてきましたが、ギャラリーには42枚もあって、まだまだ先が長いので、今日のところは、まずはここまでということで一旦公開します。ブログを書くのってけっこう時間かかりますね。続きはまた明日書きます。というか、こういう撮影後記的なエントリーって皆さんの役に立ってるのかどうかわかりませんが、自分的には、こうして撮影を振り返って、ひとつづつを言語化するっていうのは悪くないなと感じてます。引き続きよろしくお願いします。

→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 3

3 comments:

  1. 頑張って続きを書こう!<自分w

    ReplyDelete
  2. This comment has been removed by the author.

    ReplyDelete
    Replies
    1. セイケ巨匠のそれに劣らぬ素晴らしい作品の数々、ありがとうございました。
      個人的に楽しもうとダウンロードした後で気づいたのは、福井さんのお撮りになられたものの方が多かった、ということです。
      DP3M-09の質感の佳さ、
      DP3M-10の隅々まで繊細な高解像感、
      DP3M-14の微妙な色彩、どれも驚嘆しました。
      また次回に触れられるのでしょうが、ベンチに腰をおろした女性の後ろ姿のその髪の一本一本を解像しているレンズ、マクロだけのことはありますね。

      Delete