Thursday, January 31, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Debut

ティザーサイトでも告知していましたが、1月30日に、正式にSIGMA DP3 Merrillの発売日が発表されました。2013年2月22日に発売されます

この発売日決定の発表と、今日1月31日から始まった横浜でのカメラショー「CP+」に合わせて、これまでDP Merrillのシリーズで続けてきたコラム形式を踏襲したカタチでのスペシャルサイトと、実写ギャラリーを公開しました。

SIGMA DP3 Merrillというカメラ自体については、きっと、今後、さまざまな方々が、色々な面から評価をされて行くと思います。

僕はカメラ開発の中にいる人間ではないので、SIGMA DP3 Merrillという「カメラ」についての詳しい解説は出来ません。

僕はSIGMA DP3 Merrillというカメラを、この世にどのように紹介していくか。ただそこを手がけさせていただいただけですので、僕は「紹介するサイトが出来ましたよ。見てくださいね」とお伝えするしかありません。

ただ、このカメラは、シリーズのDP1 Merrillよりも、DP2 Merrillよりも、より強く、「写真」というものを際立たせていく力を持っていると思います。そして、その思いが、「作例」ではなく、「作品」を見せて行かなければならない、という、今回のコミュニケーションのコアコンセプトになっています。そして、その「作品」をどう具現化していくか…。そこで、セイケ・トミオさんという本物の写真家へのアプローチが始まりました。

SIGMA DP3 Merrillのサイトにある写真はすべてセイケさんが撮られた写真です(サンプルギャラリーの後半と、画角違いの写真は僕が撮りました)。

そのセイケさんの写真を、まずは楽しんでもらえたらと思います。

セイケさんが撮られた、この石畳の写真。そしてプラハ駅ホールのガラス窓の写真。我々が暮らしている街にでも、こういう場所は存在します。しかしセイケさんが撮ると別の世界が出現する。

セイケ・トミオという写真家が、なぜ世界で高い評価を受けているのか。美術館がパーマネント・コレクションとして買い上げていくのは何なのか。ロンドンのハミルトン・ギャラリーなど、世界最高峰の写真専門ギャラリーたちが、セイケさんの新作を心待ちにしているのはなぜなのか…。これらの写真を見るだけでも、その理由があきらかになってきます。

プラハで過ごしたセイケさんとの日々は、言葉にならないものを沢山経験しました。「写真」というものへの情熱。そして「写真」がどれほど素晴らしいか。そうしたことを本当に沢山学びました。それについては、あらためてこのブログに記して行きたいと思っています。

以下は今回のプラハでの撮影のサンプルギャラリーの撮影メモです。合わせてお読みいただけたら幸いです。

→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 1
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 2
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 3
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 4
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 5
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 6

→ SIGMA DP3 Merrill : オフィシャル ティザーサイト
→ SIGMA DP3 Merrill : オフィシャル スペシャルサイト
→ SIGMA DP3 Merrill : オフィシャル 実写ギャラリー


Sunday, January 27, 2013

Photo Pro: 現像での肌の作り方

SIGMA DP2 Merrillは人を撮るにはとても適したカメラと言えます。搭載されているDPレンズは35mmカメラ換算で46mmという焦点距離で、一般的に標準レンズとされる(人間の眼の見え方に近い)50mmに近い画角は、人物に向けての構図も作りやすく、またF2.8という明るいレンズは、開放からシャープな結像ですし、少し絞っても驚くような描画を見せます。

さらに、すべての光をRGB三色のフルカラーでキャプチャしているMerrrillセンサー(他社のカメラはモノクロセンサーです。本来のカラーで記録しているのはこのカメラ搭載のセンサーだけです)は、細かなディテールを見事に記録していきます。

ただ、このピクセルシャープな特性は、風景や静物などの被写体には素晴らしく向いていますが、人物、特に女性を撮ったときに、あまりにも微細にディテールを描きすぎて「ひどい!」と言われてしまうこともあります。実際にそこにあるものを撮り、記録する能力が高い分、毛穴やシミなども目一杯描いてしまうわけです(笑)。しかし、そういう場合でも、X3F(RAWモード)で撮影しておけば、現像段階でかなり肌の調子を整えることが出来ます。

では具体的に、どうすればいいのか、ということですが、これはひとつの提案ですが、風景などと同じようにRAWデータの現像で、むやみに色温度や露出、コントラストなどを調整し始める前に、まず「ノイズリダクション」という機能で肌の調子を整えてみましょう。

左に貼ったのは調整パレットの下の方にある「ノイズリダクション」部分のキャプチャです。この中の「色ノイズ」と「輝度ノイズ」の指定を変えるだけで写真の印象は大きく変わります。

この「ノイズリダクション」機能は、肌の調子を整えるために用意されたものではありません。本来は高感度撮影時に発生しやすいルミナスカラー(三原色のにじみのようなもの)などをソフトウェア的に処理するものです。

一方、女性の肌でいう「シミ」のような要素は、表面の肌の色の下層に濁ったくすみのようなものを伴っています。このくすみをデータ的にノイズという風に考えると、本来の使い方ではありませんが「ノイズリダクション」機能は、その低減に機能するのではないか。

僕はそう考えて、まず先に、こうした地肌の処理をできるだけ行なってから、色相やコントラストを考えるというプロセスで現像を行なっています。これはメイクアップアーティストがモデルをメイクしていく考え方と同じです。まずベースメイクを施し、肌全体を整えること。その後で、どの程度の光と影の印象を与えていくか、どう立体的に見せるか、という風に、最終的に仕上げたいイメージに近づいていくわけです。最初からコントラストや色相を調整して四苦八苦するよりも、このプロセスを踏んだ方が、最終的な仕上げへの意思決定にはずっと近道だと感じています。

さて、以下に貼った複数の写真は、「色ノイズ」と「輝度ノイズ」の二つのパラメータを最大に変えたところでのキャプチャです。すぐ下にある写真がノーマル現像です。その下に「ノイズリダクション」の指定値を変えたものを4枚貼りました。それぞれパレットのボタン位置と肌の質感を参照してみてください。肌の表情が大きく変わることがご理解いただけるかと思います。

とはいえ、写真にはそれぞれ違ったテーマがあり、写真に撮られる女性もさまざまです。ここで示していることがベストな方法とは決して言いません。それぞれに考え、それぞれに現像を試みてください。このブログエントリーは、「ノイズリダクション」という機能が、あまり使われていないようなので記してみました。この機能は、こうした肌の質感調整だけにとどまらず、景色の写真に対しても思いもかけない効果を生む場合もあります。きっと楽しいと思いますので、X3F(RAWモード)で撮影し、SIGMA Photo ProでのRAW現像で色々と試してみることをおすすめします。

ちなみに、この写真の女性は、2012年7月にDP1 Merrillのカタログ撮影のために訪れたオレゴンの牧場の女主人、ジーニー・カーヴァーさんです。この写真はDP2 Merrillで撮りました。強く、優しく、美しく、あらゆる気配りを僕たちに向けてくださった素晴らしい女性でした。






Tuesday, January 08, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Teaser

SIGMA DPシリーズの最新機種として、中望遠レンズが搭載されたSIGMA DP3 Merrillが開発されました。2013年2月に発売される予定です。このカメラの開発が進んでいるという情報すらこれまで伏せられて来ましたので、今日の発表に驚かれた方も多いのではないかと思います。

僕の知るかぎりですが、実際のところ、今のMerrillセンサーに移行する前の初代DPシリーズが系譜を重ねていたころ、中望遠レンズを搭載したレンズ一体型のコンパクトカメラという構想は存在していました。同時にズーム機能も検討されていた記憶があります。しかしコンパクトネス具現化にあたって、困難な壁も少なくなかったのか、その後、この構想は耳にしなくなりました。それから3年後の今日です。そういう意味でも、このカメラは、シグマの「良いと思ったらあきらめない」という一種の頑固さのようなものが創りだしたオリジナリティの塊のようなものではないかと思っています。

そんなDP3 Merrillの今日の発表に合わせて、ティザーサイトを制作しました。写真は世界的に有名な写真家、セイケ・トミオさんによるものです。セイケさんは、僕がバリ島で撮影した初代DP2のカタログを手にしてくださり、そこでデジタル写真の可能性を感じてくださって、以後、シグマのカメラを使い続けてくださっています。

その縁もあって、今回の撮影を恐る恐るお願いしたところ、引き受けてくださいました。35mmカメラ換算で75mmに相当するDP3 Merrill搭載のレンズ特性を、見事に生かし切った写真は「さすが」の一言に尽きます。もっと沢山見ていただきたいのですが、それはまた次回に。どうぞ楽しみにしておいてください。また、セイケさんと共にロケで過ごした時間は、僕にとって得がたい経験を積むこととなった時間でした。それはまたこのブログに書きたいと思っています。

●追記:明後日、1月11日からセイケさんの個展「Light in Monochrome」が、ライカ銀座店サロンで始まります。この個展はシグマのカメラで撮影された写真ではなく、ライカMで撮られたものですが、本物の写真家が作り出す深淵なるモノクロームの世界に触れる絶好の機会ではないかと思います。よければ足をお運びください。