Saturday, April 25, 2009

Sigma DP2: My Pleasure

そろそろSigma DP2について語っていこうと思います…と先のエントリーに書いたのですが、僕は株式会社シグマの社員ではなく、あくまでも外部の人間として、シグマのブランドディレクターという立場を務めている人間です。その立場から、写真というものを愛している人たちに、シグマが作るカメラが持つ本当に素晴らしいパフォーマンスを、どうしたら伝えていけるだろうか…と、それを暗中模索しながらアイデアを出し、シグマさんと熱い議論を交わしながらコミュニケーションの骨子を決め、それを具体化していくアートディレクターでしかありません。ですので、僕がこのブログに書いていることは、決してオフィシャルな情報ではない、という前提で読んで頂きたいと思います。

とはいえ、そうした立場から僕が得ている詳細な情報は、シグマ社が広報として一般に向けてリリースする情報量をはるかに超える内容のものであり、同時にコミュニケーションを決めていくディレクターとしては、当然のこととして、それらの専門的な情報を鵜呑みにするのではなく、ちゃんと自分自身で理解できるように勉強を重ねてきました。そして、その専門的な知識を持った上で、プリプロダクト実機を使ってのテストを重ね、自分の感じた点をフィードバックしていく、というプロセスを経てきています。

そうして、守秘義務的な側面を多く含んだ詳細な情報を自分なりに理解した上で、「一般的なユーザーからすると、これは絶対ダメ」。と言い切ったことも少なくありません。出来るだけ完成度の高い製品になるように、という立ち位置から、僕は僕で真摯にこれまでのシグマのカメラ製品には向き合ってきた…という自負は持っています。過去、これはダメと言い切ったフィードバックの中には、製品開発として非常に大きな軌道修正を行わなければならないようなものもあり、まさに経営判断に繋がるというような事態もありました。そして、そうしたフィードバックを一蹴するのではなく、本当に真摯に受け止め、シグマさんは真剣に悩んでくれる会社なのです。このシグマという会社の持つ姿勢や、それを支えるシグマに流れる文化や風土は、僕は尊敬に値するものだと思っています。そして、それがあるからこそ、こういったユニークな製品が開発できるのだと思います。

でも、そういう開発時点での紆余曲折や苦労話というものは、買ってくださる顧客にとっては結果的にはどうでも良い話であって、最終的に製品としてみなさんの手元に届いたシグマのカメラが、どれだけパフォーマンスするのか、ということが評価のすべてでしかありません。

そしてこれは、コミュニケーションを作っている僕自身の仕事においても、まったく同じことが当てはまります。僕が作るDP1やDP2などのカタログやWebサイトに「この写真はこう見てください」という注釈は書けないわけです。そこに刷られている印刷がすべて。そこに書かれている文章がすべて。実写写真そのものがすべて、であり、カタログやWebサイトを見て、それを「言い過ぎに思う」と評価されるのか、買ってくださった顧客たちが、このカメラを使うという経験を経たうえで、「シグマがカタログやWebサイトで言っているのは、こういうことだったんだな…」と、納得していただけるかどうか…。結局は、それがすべてなわけです。

だからこそ僕はシグマ社に対して、「シグマ社側に立って物事を考えていく」というスタンスと、「最終的に買ってくださる顧客の立場から物事を考えていく」というスタンスの、その両方を、常に自分の中に保持しながら、自分自身がシグマのカメラを買った顧客として、このカメラを使う顧客は「何を思うか。何に感動するか。何にガッカリするか。そして、何を誇りに思えるのか」と、そこを、自分自身の体験を通じながら、自分自身で何かを感じ、体験を経験として行けるものが、どこにあるのかを深めて行く必要がある、と考え、アルファ版、ベータ版という未完成の機材を使ってですが、さまざまなテストを行って、体験を経験に置き換えようと努力してきました。

今日は、まずは、僕がこの先DP2に関するエントリーを書いていくにあたって、自分のスタンスがどこにあるかについて書いてみました。この次は、DP1と、DP2というカメラに、どういうミッションを与えようとして行ったかというあたりを(僕が書ける範囲内でですが)書いてみたいと思います。

それから、発売された昨日のうちにDP2を入手された方々は、今日、そして明日と、お天気が悪いので、悶々とされている方も多いかと思います。この先の連休はスッキリ晴れるという天気予報もありますので、どうか、RAWモードで十分な光のある条件下で撮影してみてください。そして、それをPhoto Proで開けて、ダイナミックレンジの豊かさを実感して頂きたいと思っています。

ちなみに、このエントリーのためにアップした写真は、インドネシアでDP2を使って撮影した時に撮ったものです。被写体は巨大なバナナの樹の可憐な花。撮影初日に見たときは、まだ蕾だったのですが、なんとなく気になって毎日毎日チェックしていたところ、雨季特有のスコールが激しく降る四日目の朝に「ぺろーん」っていう感じで花弁が開きました。かなり暗い条件下でしたが、ブレないように必死でDP2をホールドして撮影しました。真ん中に立っているピンクの花弁が15cmぐらいある、かなり大きな花です。熱帯の植物はどれも大きいですね。

6 comments:

  1. こんにちは

    40mmは難しいので購入は躊躇していますが
    このエントリーと画像を見ると欲しくなってしまいます。

    http://k7003.exblog.jp/9646374/
    こういうことも書かれていました。
    まずければ、削除して下さい。

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  2. Shinyaさん、おはようございます。今日は晴れましたねー。京都はどうですか?さて、40mm換算の24.2mmレンズは、DP1に慣れてた自分からすると、最初はかなりフレーミングに戸惑いましたが、撮り始めると、画角としては標準なんだなということがすぐにわかり、そのあとはボケ足の綺麗さから徐々に使い込んでいきました。ぜひ実機を手にとって試してみてくださいね。
    それと、NKさんの英語へのダメだしですが、ちょっと日本人には理解できない言い回しなどがあるかもしれません。この英語はコンセプトをしっかりと理解してくれるまでブリーフィングした上で、クリエイティブライティングを専門とするネイティブのコピーライターに書いてもらい、それをアメリカ人と英国人の人間が意見を出し合って練り上げてもらったものです。僕なんかは、もう横で見てるだけ(笑)なレベルで、ネイティブがネイティブのために作ったコピーです。今はまだ実装されていませんが、DP1のように、近々にアジア圏の言語も含めて多言語板を公開していきますので、どうか温かく見守ってやってください。コメントありがとうございました。

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  3. 保坂と申します。
    初めまして。
    DP1を愛用していて、某カメラ雑誌でDP2のβ版(ver.0.25)を使わせていただきました。
    商品版はまだ手に入れてないのですが、DP1より雰囲気のある写真が撮れるような気がします。
    ですが、買うのは少々、様子見中。(^^)

    #Twitterをフォローさせていただきました。
    いろいろ、お話しを聞かせて願えればと思います。

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  4. 保坂さん、はじめまして。DP2の価格については、またエントリーの中に書こうと思っているんですが、実際のところ、ものすごく安い価格設定なんです。だからっていうことでもありませんが、買っていただきやすい価格設定はシグマの誠意と努力の結果ですので、ぜひ使ってみていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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  5. 京都はすごく寒くGWなのにストーブつけています。(笑)
    DP2の写真が見たいとコメントがあるのですが
    昔から標準レンズが苦手で、でもDP2の安い価格設定に悩みはつきません。

    やはり、ネイティブコピーなんですね、
    私の場合日本語すらダメですが・・・・。

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  6. Shinyaさん、ストーブってまじですかー!やっぱ京都はさすがだなー(謎)。英文の件は、僕も気になったのでシグマアメリカの方に問い合わせてもらったんですが「ぜんぜん問題ない。シグマという会社の持つ意図通りにできている」と回答もらいました(どきどきしましたがほっとしました)。日本語って深いニュアンスを与えられるわけですが、それと同等のものが埋め込めているのかどうかは、言語だけでなく地域性なども鑑みながら、これからも悩んで考えて作っていきたいと思います。

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