Thursday, February 07, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 6

DP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモも、今日で第六弾。最後になります。今日はDP3M-36番からです。

DP3M-36
いつもは一人で撮影されているセイケさんにとって、ずっと後ろをついてきて、時には待たせる僕のような存在は、あきらかに邪魔者だったと思います。でも、そこは紳士のセイケさんですから、「あっち行け」とか、「もう来るな」とかは絶対に仰らないわけです。そんなある日、僕は朝から用事があって宿を出ることが出来ず、セイケさんとは別行動でした。セイケさんは、足手まといな僕がいなくて、きっと清々しておられたのではないかと思います。でも、この日はずっと小雨が降っていて、セイケさんが撮影されているのかどうかもわからず、とにかく用事を終えて、午後に落ち合いました。そしたらセイケさん、随分と優しいのです(笑)。とてもご機嫌で、「今日はね、色々撮れたんだよ」と、カメラの液晶で撮れた写真を見せてくださるのです。そして、「カフェに入ろうか」と、これを撮ったプラハのカフェ・ルーブルに連れて行って下さいました(ここのホット・チョコレートはプラハで一番濃厚で美味しかったです)。恐縮しながらも、その時にお聞きした話は、「写真とは」の真髄に迫る話で、僕にとっては忘れられない時間となりました。これは、その時にセイケさんが頼まれた紅茶のポットです。とても暗かったので三脚を立て、ガラスコップに焦点を合わせて撮りました。絞りはF5.6です。自然なボケ感と、滑らかな質感描写が、ポット、グラス、カップの、それぞれの立体感を素直に記録しています。また、窓の外からの光も柔らかく、静けさを感じます。そして僕は、この写真を見るたびに、セイケさんから頂いた金言が、いまも蘇ります。

DP3M-37
プラハの街を縦横無尽に走る「トラム」こと路面電車。僕たちは毎日乗って移動していましたが、不思議なことに観光客が乗っているのを、あまり見ませんでした。彼らはどうやって移動しているのかわかりませんが、まぁトラムに乗らなくても旧市街を歩いて回るだけでも観光は十分に出来るので、そういうことなのかもしれません。とにかくトラムは便利です。停留所で待てばすぐに来ますし、どこに行くのもチョイ乗り感覚で、乗ったり降りたり。それぐらい煩雑に次から次と走って来ます。そんな中、石畳と線路の輝きのコントラストに魅せられていました。でもじっくり構えて撮っているわけには行かないのです。線路に立つと、すぐに後ろから電車が近づいてきて「ぽわーん」と警笛が鳴らされます。それに線路のところはクルマも走るので危険なのです。でも、ある日、クルマが来ない線路だけの場所を見つけ、撮っては歩道に戻り、また路面に戻って撮る、というのを繰り返して、これを撮ることが出来ました。構図としては、夕方の路面の、ほとんどモノクロームの絵で、あまりに構成的すぎるので、この構図の中に、通りすぎて行ったトラムの余韻の赤い色の光を入れようと粘りました。絞りはF4.5です。

DP3M-38
これは、アールヌーヴォーの代名詞のような存在の「アルフォンス・ミュシャ」がデザインした、聖ヴィート大聖堂のステンドグラスです。でかいです。巨大です。ディティールを撮りたかったので、近づけるだけ近づいて撮りました。他のステンドグラスにはない美しい色彩も、細かなガラスの質感も、ちゃんと写ってますね。この大聖堂の中は、写真はOKなのですが三脚は立てさせてくれません。どう考えてもブレると思い、お願いしましたが許可されませんでした。仕方がないので手持ちで撮ることにしました。そういうわけでこれも開放F2.8です。ISO感度を上げようかとも思いましたが、このベータ機では、こういう暗い所ではバンディング・ノイズが出ることを懸念していたので(この写真にも出ています)やめました。そして、こういう時に連写モードが役立ちます(笑)。左右のブレは写真的には致命的ですが、前後のブレはピント位置が違ってくるだけで、まだ救いようがあります。ですので、出来るだけ身体が横に揺れないように足を踏ん張り、あとは集中して撮り続けました。このベータ機ではなく、発売される本番機なら、ISO400 / F5.6ぐらいでも余裕で撮れるのではないかと思います。しかしこれ、微妙な色までホント良く写ったなぁ。

DP3M-39
セイケさんとの撮影は2012年11月30日に終了し、セイケさんは翌朝にプラハからイギリスに戻られました。僕はもう一日滞在し、ステンドグラスの写真の38番から夜景の42番までを撮りました。これらは、このサンプルギャラリーに掲載するための写真として撮ったもので、セイケさんと一緒に過ごした時間での写真以外に、もう少し色彩感のあるものや、建物、よりスナップ的なものも撮影しておかなければ…と、そういう感じで撮ったものです。そこで、セイケさんとの撮影では徹底的に避けてきた観光地に出かけました(笑)。そしてこの快晴です。セイケさんと撮影していた時には、一度も出なかった見事な青空が広がりました。これだけ明るいとブレの心配もなく、ある意味、気楽に撮れます。そんな気持ちを天が察したのか、真上をジェット機が真っ直ぐに飛んでくれました。飛行機雲にフォーカスを置くのではなく、手前のシルエットにピントを合わせました。絞りはF5.6です。これはノーマルに現像していますが、Fov Classicモードで現像すると空の青が際立ったのかもしれませんね。

DP3M-40
西陽に照らされる聖ヴィート大聖堂を見上げた図です。38番のステンドグラスを撮ったあと、大きな教会をぐるりと回遊し、表に出てきたところです。言ってみれば大聖堂の正面ですね。ただ、DP3 Merrillの「レンズ紹介」のページの一番下に、DP1 / DP2 / DP3の画角違いを載せましたが、DP3 Merrillは、これぐらい狭い画角なので、全体を撮るにはかなり下がらなければなりません。しかしこの大聖堂の前はそんなに広くないのです。サンプルギャラリーの10番の、遠景から撮った大聖堂の写真でもわかるように、周りは建物で囲まれているので引きがありません。仕方ないので、逆に寄って、正面のステンドグラス部分を撮りました。しかし写ってますね。保護用にかけられたネットの、網の線の一本一本が、すべて滲まずに描写されていて驚きです。他社のカメラだと、これと同じ画角で撮ると、おそらくネットの色と背景の色が近い部分は溶けてしまったように写ってしまいますが、そこはMerrillセンサー、さすがの描画です。それから、これは晴天ですがISO200で撮っています。その理由は白飛びを防ぐためです。このように直射日光が当たっていて、被写体に強いコントラストがある場合、ISO100のJPEG撮りでは白飛びが起こる場合があります(RAWで撮っていれば現像でかなり戻せる)。これはMerrillセンサーの実際の実効感度がISO100よりも若干高いことに起因しています。直射日光下では、ISO200で撮ることで回避出来る場合があることを覚えておいてください。

DP3M-41
DP3 Merrillと同時発表で話題になっているモノクロモードの写真です。あくまでもベータ機での撮影ですし、現像もPhoto Pro5.5のベータ版で現像していますので、これも「見本」という見方でご覧ください。この写真を撮った場所はプラハのアンジェル駅の裏通り、プルゼニスカーから南に少し行ったあたりです。プラハのマンホールは、紋章のある文様も魅力的なのですが、この鋳鉄のザラザラした質感が美しく、また石畳との対比もいい感じ。奥から光が差し込むのを待って撮りました。モノクロモードでの現像では、光の入り具合と、鋳鉄の鈍い輝き、この二点に絞って現像しています。Foveonのセンサーは、元々光を100%取り込んでいますので、X3FというRAWデータは、そのすべての光の情報を保持しています。ですので撮ったときに生成されるJPEGデータでの階調や、ハイライトなどは、あくまでも暫定的な現像結果でしかありません(またJPEGでは白飛びが起こりやすいのです)。そして色分離せず「すべての光」の情報をモノクロームでコントロールするわけですから、カラーの現像よりも、より突っ込んだ印象操作が可能です。これは次のSIGMA Photo Pro 5.5がリリースされたら、是非みなさんに試して頂きたいところです。ちなみにこの写真の元のデータは、またFlickrにアップしますね。まったく印象の違う絵ですので、現像でこんなに出来るのかと驚かれると思います。■追記:Flickrに元の写真をアップしました。Flickrのは撮ったまま現像したデータです。

DP3M-42
さて、長々と書きつづけてきたDP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモも、最後の写真になりました。この写真は、マーネスーフ橋の上から、カレル橋を撮ったものです。プラハは夜になると主だった建築に美しい照明が当てられます。それもよく考えられていて、照明の光源が上手く隠されていて、夜でも写真が撮りやすいような配慮がありました。このあたりはさすがです(京都や奈良の、あの無神経な照明は考え直してもらいたいものです)。そういうわけで夜景を撮りたいと思っていましたが、中々絵になる光景に出会いません。そこにカメラを向けても、ただ照明の当たった古い建物、でしかないわけです。そんなことから川面に光が映り込む光景を撮ることに決め、カフェ・スラヴィア側から王宮を狙ったり、ストジェレツキー島から見てみたりと、色々歩いた結果、このマーネスーフ橋から見た光景に決めました。ISO100で4秒露光です。空に伸びる照明のフレアが美しく、評価測光での±0から露出を少し開けて一度撮りましたが、左の建物に白飛びが出たので、その両方を鑑みて露出を-0.3下げて撮っています。それでもこのバックライトの感じがちゃんと写っていて美しいですね。また、この写真は色温度をあえて「蛍光灯」にして撮っています。この設定での色が、僕には最も美しく感じたのでした。異邦人を温かく受け入れ、色々な経験をさせてくれたプラハの街への感謝を胸に、最後の夜に輝くプラハを撮る。これはその時の僕の心の中の色です。

これでDP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモは終了です。見ていただいて、DP3 Merrillってこういう感じなのかな、と、そういうニュアンスを少しでも掴んでいただけたらと、そういう想いで書きました。また、写真の解説というよりも、撮影記になってしまったものもありました。でも、旅の写真は、そういう「そのときの記憶」こそが重要なのではないでしょうか。それを元に現像し、記憶を焼き付ける。そしてその経験を自分のものにして、また次の旅へとつなげていく。そういう意味でも、「写真」というのは素晴らしいものですね。

最後に、心からセイケさんに感謝します。ありがとうございました!

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以下、この撮影メモのエントリーリストです。それぞれ7枚づつです。合わせてお読みいただけたら幸いです。
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 1
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 2
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 3
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 4
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 5
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 6(このエントリーです)

Wednesday, February 06, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 5

DP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモも、今日で第五弾まで来ました。昨日は忙しくて、ここまで続けて来た通りに書くことが出来ませんでした。すみません。今日はDP3M-29番からです。

DP3M-29
これまで写真を公開するときは「gris」という名前を使ってきたのですが、実はそのグリィ(gris)という名前は一緒に暮らしているイタリアン・グレーハウンドの名前なのです。でも実名を出さなきゃダメ!と、DP1 Merrillのプロジェクトで一緒にカウボーイを撮影しに行ったポール・タッカーさんに強く言われたので、今回は自分の名前をサンプルギャラリーのクレジットに掲載しました。そんなわけで、ロケ先でワンコを見ると、東京にいるグリィのことを思い出して、つい撮ってしまうわけです(笑)。このワンコは、セイケさんと連日歩いていて、カタログの9Pの、衝撃的な光景(サイトではchapter2のヘッダの写真です)に出会う直前でした(このギャラリー解説とは別にセイケさんとの撮影記は、またブログに記したいと思ってます)。通りを歩いていると、ちょうど目の高さの窓にこの子が座っていました。しかし状況はとても暗く、立ち止まって撮ろうとしてもオートフォーカスが合わない!そんな中、なんとか撮りました。寄った写真もあるのですが、自分としてはこの引きの絵の、その暗さ(プラハの初冬は午後3時半には暗くなるのです)が窓に写った感じが気に入っています。

DP3M-30
この写真はトラムの席に座ったところから窓越しに撮っています。だからこの高さから撮れているわけですが、バスの座席に座って通りに立っている人を撮るとこんな感じの画角、と、そういう感じで見ていただければ、DP3 Merrillのレンズの距離感を掴んで頂けるでしょうか。決して望遠ではなく「中望遠」ですので、画角は狭いのですが、工夫すれば色々な絵を撮ることが可能です。絞りはF2.8開放です。メガネや手袋、ビニール袋などの質感がしっかりしているので立体感に違和感がありませんね。さて、この30番と手前のワンコの29番ですが、この2枚には、暗部にバンディング・ノイズが出ています。撮影を終えてからプラハで使った機材のファームウェアの具合をシグマさんに確かめて頂いたところ、このベータ機では、バンディング・ノイズ処理のところがチューンし切れていないとのこと。ですので発売される段階では劇的に改善されていると思って頂いてもいいかと思います。ちなみに、バンディング・ノイズとは、階調割れのことです。シグマのカメラでは、縦横に走る線のようなノイズのことを言います。これはセンサーの受光部が細かく方眼に切られており、そこの受光部分で発生している、本当に微弱な揺れが、そのまま増幅されて出てきてしまっているのです(と僕は理解しています)。シグマ以外のデジタルカメラに搭載されたセンサーは、すべてモノクロセンサーなので、光の強弱の部分で階調割れは起こりにくく、微弱な光を大幅に増幅してもノイズは発生しにくいわけです。でも色は調合して作っていますので、必ず「にじみ」が出る。まぁ、一長一短あるわけです。

DP3M-31
撮影中盤、セイケさんとトラムに乗って、街の西側に行ってみました。そうすると徐々に古い建物が少なくなり、団地が連なるエリアに入っていきました。まさに庶民の街という感じですが、どこか整然としていて冷たさを感じます。セイケさんも何かを感じたのか「ちょっと降りて歩いてみようか」と言われ、次の駅で降りたところ、なんとも形容しがたい東欧的モダニズムに出会いました。この写真の建物はまだシックな色なのですが、この建物の奥には、建物ごとに虹色にグラデーションになっているなど、かなり大規模な再開発があったことが伺えました。70年代初頭ぐらいの建築でしょうか。コンクリートとアルミとプラスチックとガラス。そこかしこに共産圏の香りがします。旧市街の「華麗なる百塔の街」と形容されるようなプラハから受ける郷愁とは別の、実際に人々が暮らす真実の姿の一端。この光景に触れたことで、僕は違った感覚が呼び起こされました。

DP3M-32
20番の説明にも書きましたが、観光地は別にして、庶民の街では、店先を彩るようなディスプレイがほとんどありません。もちろん無いわけではないのですが、工夫がないと言いますか、魅力的なプレゼンテーションが少ないのです。セイケさんも「パリの小粋さを求めてみてもプラハにはない。だから逆にモノを見る目を鋭くしなきゃならないところもあって、この街は集中力を求める」と仰ってました(巨匠らしいお言葉です)。確かにパリは(それが郊外であっても)、工夫を凝らした軒先に数多く出会えますし、写真に、そのエスプリを写し込むのも容易です。しかしプラハは違う。この街は、もっと足が地についた視線を求めて来る。そんな風にセイケさんの言葉を咀嚼しながら歩き続けました。そして出会ったのがこの黒板でした。お肉屋さんの店先です。勢いのある文字に惹きつけられました。まず、消しては書いた痕跡のある黒板にカメラを向けましたが、壁の色と窓枠の色とのコントラストも良く、それらを含めての構図にアタマを切り替えて撮りました。
●追記:コメント欄でmonoceros59さんが指摘してくださったように、赤い窓枠のところに羽虫が一匹とまってます。か細い足までしっかり描写していますね。

DP3M-33
どこに行っても、僕はこういう光景に出会うと萌えてしまいます(笑)。こういう偶然が生んだアブストラクトの読解が楽しいのです。過去、こういうので一番すごかったのはベネチアで、剥がして次を貼るのではなく、上に上にと糊を塗っては貼っていくので、その厚みとシワの寄り方に萌えまくりましたが、プラハのこれは、剥がし手と貼り手の妙な息づかいが感じられます。またこれは、すごくプラハらしいと感じました。多様なタイポグラフィ。またその重なり方も絶妙です。手描き風のクルマのイラストや、その上に踊っているように腰掛けた人の姿のような要素もいい味を出しています。また色も、他では見ない色彩感。さらにこの背景の壁から浮き出た長方形が絵画のキャンバスのようでもあります。そもそもこれは電気のヒューズのような配線部分のカバーなのです。それがいつしかキャンバスとなり、それを良しとしないこの建物の管理人が剥がす、というのが繰り返されている…。そんな光景を思い浮かべながら構図を決めて撮りました。これは絞りF3.5です。

DP3M-34
この写真は、サンプルギャラリー解説の第一弾で紹介した、DP3M-03番の馬の足をセイケさんが撮られているとき、隣に立っていたので、その馬の首の部分を撮ったものです。いまにも雨が降りそうな曇天でしたので、これも開放F2.8で撮っています。質感表現としては見て頂けるものにはなっているのでギャラリーに掲載しましたが、実はこれは馬を撮ろうとしたのではありません。目の前にある光景を「切り取る」という方向にアタマは動いていて、どちらかと言うと構図の中をコンポジション的に構成しようという意識が働いていたのだと思います。太い斜めの線(馬具)、右上に縦の線(たてがみ)、という具合に、構図の中を構成的にしようと、そういう感じです。でも、いま改めて見直すと、もっと絞って、寄れば良かったなと思います。構図としても左側が甘いですね。左半分の毛並みの流れも入れたいという欲が敗因ですね。もっと煩悩を滅してから撮れとセイケさんに言われそうです(滝汗)。

DP3M-35
これはプラハの中心部にある、ある建物の二階から、中庭ごしに回廊の向こう側を撮ったものです。この場所にはセイケさんと二度訪れました。この写真をサンプルギャラリーに載せたいと思ったのは、この見事な質感表現もあるのですが、回廊の奥の壁の上部のあたりの表現力を見て頂きたいというのが本音です。DP2 Merrillのプロジェクトでのモロッコの撮影でも「これはすごいなー」と感じたことなのですが、Merrillセンサーは徐々に暗くなっていく部分の描画力が他社のカメラに比べて圧倒的に高いのです。この写真で言えば窓の上から画面が切れるまでのあたりの描画です。モロッコの写真(DP2 Merrillのギャラリー12番の写真)の、左側の回廊の奥の光があまり届いていない暗いところあたりの描画です。つまり、そこは実際はとても暗いのです。でも前が明るいので、そこからの反射する光があって暗さが緩和されている。そういう緩やかなリフレクション。それが全体のバランスを崩さずに写真にしっかりと写る。この写真で言えば、向かって左の窓の上のあたりの質感描写は、全部そういう下から煽られた微妙な光だということがわかります。こういう「光の持つ方向性」のようなものを感じられるのがMerrillセンサーで撮った写真の魅力のひとつです。神々は細部に宿る。こうした微細なところの優れた描画。そしてその集合体としてのリアリティ。水面のようなものを撮っても、まさに!と、リアルに感じることが出来るのも、こういう「光の方向性を描き分ける能力」があるからではないでしょうか。

今日もなんとか7枚書けました。残すところ、あと7枚ですね。引き続き書いて行きたいと思います。

→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 6 へ


Tuesday, February 05, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 4

DP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモ、第四弾。今日はDP3M-22番からです。

DP3M-22
DP3 Merrillのレンズにはマクロ機能がついています。マクロとは接写のことです。フィルム時代はマクロと言えばフィルム上に等倍での撮影が出来る前提のレンズを指していましたが、デジタルカメラになってからはセンサーサイズが色々出てきて、等倍ではない場合にもマクロという言い方をするようになりました。今は撮影倍率という言い方のほうが正しく伝わるのかもしれませんね。DP3 Merrill搭載DPレンズのマクロは最大撮影倍率1:3です。また最短で被写体に寄れる距離は22.6cmです。そういう数字を出してもイメージが湧かないと思うので、22番と23番はマクロの見本としてサンプルギャラリーに掲載しました。22番は昼食時にレストランでマクロテストをした時の一枚です。フォーカスは瓶の手前のハイライトに合わせ、F5.6まで絞っています。手前のテーブルの合焦具合を見て頂くと、被写界深度とボケ具合がわかるかと思います。

DP3M-23
23番もマクロの見本としてサンプルギャラリーに掲載しました。プラハから帰国してから、トランクの小袋にある色々な硬貨を混ぜて撮りました。ユーロだけでなく、オーストラリアドルとかインドネシアのルピーとか、昨年行ったモロッコのコインもありますね。中央右のフォーカスを合わせたのがプラハでの通貨「チェコ・コルナ(Koruna česká)」の20kč銅貨です。この20kčコインのサイズは、いま定規でちゃんと測ってみたら、直径が26mmでした。このサイズで、どれぐらい寄れるかの目安にしてもらえたらと思います。フォーカスはコインの20の数字下の「kč」のところに合わせています。絞りはF4.5です。F2.8だと奥のコインはかなりボケた感じになります。それにしても使い込まれたコインというのは、その痕跡がこんなにあるものなんですね。実はプラハでの撮影は氷点下が続く中でしたが、このチェコのコインは、お釣りなどで手渡されたときに不思議と冷たさをあまり感じませんでした。それはこのコインの無数の傷が、手に優しく馴染んだからなのかもしれません。

DP3M-24
これを撮影した日の前夜から冷たい雨が降りはじめ、早朝も小雨が残っていました。もちろん雨だからといって撮影中止ではありません。逆に、濡れたことによる輝きや、変化する景色を求めて、いつも通りにセイケさんと出発です。プラハには大きな公園や広場が沢山あります。それぞれに銅像が立っていたり、教会の前庭的な佇まいだったりと特徴があるのですが、この写真は街の中心部にあるカルロヴォ・ナームニェスティーのカレル広場で撮りました。朝の9時半ぐらいですから人影もまばら。セイケさんはベンチと柳の落葉にカメラを向けられます。次に遠景の構図に移られたので、僕は邪魔にならないように少し離れて見守ることにしました。しばらくして振り返るとこの光景。うひゃって感じです。この公園は道路が3本通るほどに縦に長く、川側には近代的なビルもあるので、オフィスから抜けだしてきた女性でしょうか。携帯で誰かを説得するように話しています。DP3M-18の時のようにカメラをぱっと構えて5枚ほど構図を変えながら続けて撮りました。絞りはF2.8の開放。オートフォーカスで撮っていますが、髪にビシっとピントが来ていて、これは絞り開放での解像感を見て頂くには良いかと思ってギャラリーに掲載しました。ちなみにこの写真は、現像では何ひとつパラメータを変えていません。まさに撮ったままでこの描写。驚きです。

DP3M-25
前にも書きましたが、プラハの街を歩いていると、どうしたらこんな質感になるのか、何があってこんなに剥げてるのか、ここでいったい何が繰り広げられたのかと、思わず思い耽ってしまうようなディティールを持つ壁に出会います。この壁もそのひとつ。積み重ねられた石だけでも何種類もあり、またそれぞれの朽ち方にも「時間」を感じます。これも絞り開放F2.8で撮りましたが、カサカサした壁面にフォーカスしているにも関わらず、思った以上に雨樋の持つ質感が出ていて、平面的な撮り方なのに立体感を感じる絵となりました。さらに、この写真をギャラリーにアップしたいと思ったのは、さまざまな「黒」の表現力です。ただ汚れた黒というものではなく、煤けた黒、湿度を持った黒など、それぞれの質感を感じる黒の描写力。煤の厚みの違いまで感じる。これがMerrillセンサーの実力ですね。

DP3M-26
この写真は、プラハ北駅から、南側に伸びるトラムの線路に沿って歩くとすぐのところにある古本屋さんの入り口脇の光景です。このあとの27番、28番も、同じウィンドウの光景です。古写真の飾り方に沢山のピンを打っている光景が珍しく、セイケさんに「ちょ、ちょっと撮ってもいいですかぁ」と、待って頂きながら(汗)撮りました。これらの写真の「写り具合」は、見て頂いた通りで、狙ったものが際立つ写り。さすがの描写です。それから、同じ被写体でこの26番、27番、28番と3枚続けて掲載したのは、こういう被写体に出会ったとき、「その場の雰囲気を含めて撮りたい」、「気に入ったものをマクロ的に寄っても撮りたい」という、実際に撮るときの意識の流れのままに掲載することで、DP3 Merrillのレンズの感じを掴んでいただけるといいなと考えたからです。どうでしょうか。イメージして頂けるでしょうか(汗)。

DP3M-27
単焦点レンズでの撮影は、自分から身体を動かしながら構図を決めなければなりません。動かずとも寄れるズームレンズは便利ですが、実はズームは被写体への角度は変えられません。ただ被写体に寄っていくだけです。ですので、ズームする前に「確定」した構図が決まっていなければ、撮れたようで撮れていない、もしくは、撮った気になれたけれど、後から見ると面白くない写真になっている、ということに繋がりやすいのです。一方、シグマのDPシリーズのように、カメラの焦点距離が決まっていると、まず画角と相談する(脳内)、寄るのか引くのか(身体を動かしています)、構図の中の要素の整理(微妙に動きつつ脳内)、垂直水平など(ド集中)、と、こういう身体性を伴いながら構図を摸索していくわけです(この感じは僕だけっすかね 汗)。こういうことを続けると、自分と被写体との深い対話という「経験」を積み重ねていくことが出来ます。そしてその先に「自分らしい写真」というものが見えて来るのではないでしょうか。

DP3M-28
この一連の写真の撮った順番は、27番のマリア様を撮ってから、全景としての26番を撮り、そのあとこの写真を撮っています。意識としては、先に角度のある構図で27番のマリア様を撮ったので、それとは違う構図を探したくなったのでした(セイケさんを待たせていると言うのに!)。そしてフラットな撮り方でコンポジション的に撮ろうと決め、マリア様よりも下にあって水平に撮れそうな、この女性の肖像写真に決めました。紙自体のザラッとした質感も撮りたかったのだと思います。構図を決めようとしたとき、肖像写真の女性の目線が正面ではなく向かって左を見ているなと思ったことを覚えています。ですので、直感的に構図をずらし、上と右に黒い部分を入れてリズムを作ろうという意識が働いたんだと思います。他人事みたいですが、スタジオで煮詰めながら撮ってるわけではないので、その時にどうだったか定かではありませんが、僕の思考回路はそういう風に動いたと思います。あと、これぐらい近い距離での手持ち撮影だと、腕も身体も微妙に揺れているので、どうしてもフォーカスが動きます。そういう時は「□」が三つ並んでる連写モードに切り替えて、とにかく同じ画角でシャッターを押し続ける。これで確実にフォーカスばっちりの一枚が撮れます。後にまた書きますが、ステンドグラスの写真はそれでゲット出来たのです(笑)。

今日もなんとか7枚分のメモを書くことが出来ました。続きますので、明日以降もよろしくお願いします。。

→  SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 5

Sunday, February 03, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 3

気軽に書き始めたこのDP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモですが、いざ言語化していくとなるとむずかしいものですね。思っている以上に時間もかかりますが、最後まで続けて行きたいと思います。今日は「DP3M-15」番からの写真です。

DP3M-15
昨日のエントリーの13番に、セイケトミオさんが天使にカメラを向けておられる時の「心の持ちよう」の話を書きました。あたりまえですが僕が天使を撮っているときとは大違い。僕はもう構図と露出を決めるので精一杯で、その時の「心」と言えば「シルエットがかっこいい」という程度のものです(恥ずかしい)。まぁ、「セイケさんは偉大な写真家であって、もう神ですからー」とか言い訳してみても始まらないので、今後はセイケさんの教えをしっかりと自分のものにして行きたいと思います。さてこの写真、かなり現像で印象を起こしています。この「起こす」というのは、RAWでの記録で撮影するからこそ可能なのですが、奥の空の明るく飛び気味なところはアンダーに抑えて雲の調子を出し、黒く潰れた手前の天使のシルエットは逆にハイライト部分を起こして暗い中にも羽根や腕の立体感を出そうとしています(X3 Fill Light:を+1.2まで使っています)。明るい部分を暗く(調子を出す)、暗い部分を明るく(質感を出す)する。この相反した調整を、同時に出来るのがシグマのX3FというRAWデータの素晴らしいところです。これは使った人にしかわからない事だと思うので、シグマさんには是非、X3Fデータのダウンロードと、Photo Proの試用版の提供など、この現像体験が出来るようにするお許しを頂きたいものです。

DP3M-16
昨日ご紹介したプラハの丘の上にそびえ立つぺトシーン鉄塔からのプラハ城遠景撮影(10番)を終え、299段ある螺旋階段を下まで降りてきたとき、寒さにブルブル震えながら飼い主を一生懸命探しているプードルがいました。近づくと怯えた表情を見せましたが、しゃがんで話しかけ、身体をさすってあげると落ち着いたようで、震えも止まり、写真を撮らせてくれました。彼女は左眼が白く、たぶん白内障にかかっていてほとんど見えていないのだと思いますが、しっかりカメラ目線を送ってくれました。開放F2.8で撮ったので少し後ピンになっているのが気になるかもしれません。でも、優しいご主人がこの子を大切に育てていることがわかる丁寧にカットされた毛並みは見事に写りました。これぐらいの光でもISO100で1/125秒で撮れるなら、発売される実機のISO感度を200に設定すれば1/500秒で撮れますから、手ブレの心配もなく、きっと使い勝手に問題はないと思われます。そういえば、この写真を撮ったあと、ドイツ人の方に声をかけられ、「おっ、シグマのDPだね。見りゃわかるよ。あれ、レンズ長いね。新しい製品かい?」と聞かれてびっくりしました。まだDP3が開発されていることすら誰も知らない時期でしたので、「お願いだからfacebookとかに書かないでね」と懇願したのもこの写真を撮ったときの思い出です。

DP3M-17
コカ・コーラってすごいですよね。世界中、どこに行っても必ずある。そして、それぞれ国ごとにキチンとエリア・マーケティングがされている。さらに、その国々でのコークの表現がある。コカ・コーラのマーケティング素材は被写体としても魅力的で、モロッコで撮影したDP2 Merrillのサイトにも一枚載せましたし、オレゴンでのDP1 Merrillの撮影でも古い看板と出会いました。これだけフォトジェニックなブランドは他にはありません。そんなコカ・コーラ。プラハではプラハらしい佇まいで僕を待っていてくれました。この写真は、元は「日陰」モードで撮りましたが、あまりに鄙びた調子に写ったので、現像で「オート」に戻し、現物の色を再現しました。実際、これを撮った場所は北駅からさらに北に裏路地を入った、いわゆる危ないエリアで、堂々と三脚立てて撮るというのは無理。なのでブレないようにガラス面に身体を押し付けながらカメラをホールドして撮りました。夕方の曇天という弱い光で、さらに窓越しなのに、黒いコークの部分が潰れず、立体になっているのがわかります。こういう僅かな光も確実に拾うところもMerrillセンサーならではの特徴だと思います。

DP3M-18
実は、この絵になるカップルの後ろ姿を見つけたのはセイケさんなのです。街の中心部に来た時、ぱぁーっと日差しが出て、影が落ち、街の見え方が一変しました。コントラストが強まり、逆光からのシルエット的な絵を僕は目で探っていました。そのとき、「むっ」というセイケさんの小さな声が聞こえました。振り返ると、公園のベンチに座るこのカップルたちに忍び寄るように近づいて行きます。こうしたフォトジェニックな被写体を見つける能力も写真家の目なのです。セイケさんはこの写真よりも左斜め後ろに移動され、もっと広い構図を探っておられたようです。僕は素直に真後ろからこの構図に決めてまず撮りました。撮影モードの設定は、絞り優先のISO100、絞りは開放F2.8、色温度は「オート」で、僕のデフォルトの設定のままです。これを撮ったあと、設定を変えて撮ろうとしたら、この二人のまわりに沢山の人が来てしまい雑然としてしまいました。見つけたらすぐカメラを構えてパッと撮る。そんな感じで撮れた一枚です。奥の教会の描写、樹木の細かく輝く開放でのボケ具合、そして合焦している手前の人物。これらが相まって感じる確かな距離感も見て頂きたくて、この写真をギャラリーに掲載することにしました。

DP3M-19
チェコはクリエイティブな文化が育まれた歴史を持っています。写真はもとより、タイポグラフィの世界でも、ブックデザインの世界でも、素晴らしい歴史を持っています。そういう背景があるからでしょうか、撮っている最中に「どう撮ってるのか見せてよ」と言われたのは一度や二度ではありませんでした。写真やカメラが好きの人が多いんですね。この写真は中古カメラ屋さんのショーウィンドウです。開店前のシャッターが降りている時間でしたので(でも沢山の人が開店を待っている)、網目になっているシャッターの間から、飾られていた8ミリカメラを撮っています。被写体の下のレンズに網目が映り込んでいますね。これも絞りはF2.8の開放です。ホワイトバランスは「日陰」の設定で普通に撮りましたが、いい味の色がそのまま出てくれました。こうした古いカメラが高値で売られ、それを眺めに多くの人が集まってくるという光景は、なんとも言えない微笑ましさがあって、僕もなぜかこの場所から離れ難かったのを覚えています。

DP3M-20
窓越しの写真が続きますが、このように窓に映り込むリフレクションを被写体に重ね合わせての絵を模索するのは、僕のこれまでのDPシリーズでの撮影を重ねる中で得たひとつの表現手段です。一方で、プラハはこういう光景で絵になる場所はとても少ないのです。街の中心部の観光地は別ですが、少し離れた庶民の街ではウィンドウディスプレイ自体がほとんどありません。共産圏だったからかもしれませんし、寒い地域というのもあるのでしょうか、「見せている」という光景は建物の中にあり、外側の建物はどれも威圧的な佇まいです。さて、この写真はマリオネットの劇場近くの人形屋さんです。この老婆は頭が掌ほどある大きなものでした。デフォルメされ誇張された立体的な顔。藁で作られた白髪や、骨ばった手。さらに渋い色に染められた衣装やウールの襟巻きなど、すべてが魅力的で、引き寄せられるように撮りました。顔の正面から目線が来ている構図も狙いましたが、右目と左目が違うところを見ているように作られていることに気づき、この写真の角度に構図を合わせ直して撮りました。これも開放F2.8の絞りです。

DP3M-21
この写真に写っているのは「JOSEF SUDEK」の写真集です。ISO100、絞り開放F2.8で、シャッタースピードは1/320秒で撮っています。このヨセフ・スーデックは、プラハの写真家です。そして今回、プラハでのロケに決めたのも、このスーデックさんという写真家が背景にあります。その理由はサイトのコラム「純朴という名の郷愁」の序文にあるとおり、写真家・セイケトミオにとって重要な意味を持つ写真家であり、今回のプラハでのセイケさんの撮影のトーンを強く導いたとも言えるでしょう。スーデックさんは、第一次世界大戦で右腕を失うという悲痛事を越え、写真家として数多くの作品を残しました。特に印象的なのは、ナチによって作家活動の弾圧を受けた時代の、彼の小さなアトリエで撮られた窓からの眺めの写真です。抑圧された中で撮られたのに、その写真から立ち上がってくるものは命への慈しみ溢れる優しい眼差しです。その写真に込められた「心」に感銘を受けたセイケさんは、スーデックさんの写真にある光を確かめたいと、後を追いかけるようにプラハに何度も足を運ばれました。そしてセイケさんは僕にこう語ってくださいました。「どこにもなかったんだよ。その光は。だからね、もう自分の光は自分で見つけなさいと、そういう風にスーデックさんに言われたような気がしたんだ」と。そうしてセイケさんは今回のプラハでの撮影に向かわれました。「スーデックの光を求めてプラハへ」ではなく、「プラハでセイケトミオの光を見つける」旅だったのです。徹底したオリジナリティが立ち上がってくる今回のセイケさんの写真には、そういう覚悟のようなものが存在しているのです。

なんかスーデックさんの話を書いていて、自分の写真のメモから離れてしまいましたが、プラハに来ることになった理由とも言えるスーデックさんの写真集が飾られている光景に出会えたのは奇跡のように感じました。そしてセイケさんもこの光景を撮られました。それはティザーサイトの最初のロゴが重なるこのカットです。僕のようなあたりまえの構図で撮らないところが写真家の目です。


さて、今回のDP3 Merrillでの撮影で、セイケトミオさんが撮られた写真の数々は、これまでのカメラのカタログやプロモーションで使用されてきた「作例タイプ」のものとはまったく異質なものと誰もが感じておられると思います。同時に、僕がセイケさんにDP3 Merrillのデビューのために撮影してもらえませんかとお願いしたとき、セイケさんも強い戸惑いを感じられたことと思います。

しかし実現することができた。それは、何度も繰り返すようですが、よくある被写体を撮った作例を見て、カメラの良し悪しを判断する次元から、写真そのものに没入する歓び、作品としての写真づくりという視座、という新たな次元に、このカメラを手にする方を誘いたい。そのためにも、勇気を持って一歩前に進み出ることが、いまなすべきことではないか。そういう僕の思いを、セイケさんに真正面からぶつけたとき、セイケさんの中に、微かに共感出来るものを感じてくださったからだと思います。

そして何よりも、これはシグマの山木社長の写真への強い情熱と深いご理解があってのことです。理解されにくいかもしれない新たな次元への前進を許してくださった山木社長のご英断あってのことです。ありがとうございました。今日はここまでにします。明日からも頑張って続きを書きますね。

→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 4

Saturday, February 02, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 2

DP3 Merrillサンプルギャラリーの解説の続きです。セイケさんの写真のあとに、僕の撮った写真を同列で並べていいのかっ!という声なき声がアタマの中を駆け巡り、さんざん逡巡しましたが(汗)、セイケさんの写真以外にも、皆さんが見たいと思うシーンも、それなりに載せた方が喜んでもらえるだろう…と自分に言い聞かせつつサンプルギャラリーに写真を掲載しました。

「DP3M-08」番以降の僕の撮った写真の持つ色調やトーンが、セイケさんの写真と近いのは、セイケさんが撮影されている合間を見ながら撮っているからです。時には僕が撮っている間、セイケさんに待っていただく、という状態もありました(滝汗)。でも、セイケさんは本物の紳士なので、ニコニコと笑顔で「いいの撮れた?」とか言ってくださるのです。なんか変な汗が出つつ、もう「んぎゃー」という感じでした(そんなプラハでの撮影記はまた書きます)。

そういうわけで、場所も近いところで撮っていますし、被写体に注がれている光の状態も、カタログやサイトにあるセイケさんの写真とほぼ同じ状況で撮っています。「もっと強い光だとどうなんだ?」というご意見もあるかと思いますが、プラハから帰国し、マクロの試し撮りを終えたあと、DP3 Merrillはシグマに返却してしまったので、ぱかーんとした快晴の下で撮るということがほとんど出来ませんでした。

さて、ではサンプルギャラリーの「DP3M-08」番以降の写真についても、メモを書いて行きたいと思います。

DP3M-08
プラハの左岸(お城のある側)の、日本大使館のところからカレル橋のたもとの方に抜けて行く途中に遭遇した光景です。燃えさかる炎や、強い風雪の痕跡。どういう歴史を経てこの壁はこんな表情になったのか。この街で繰り広げられた無数の人間模様を受け止めてきた壁。ただ朽ちているだけではない何かが僕に向かって語りかけてくるようでした。この壁のある場所は道が狭く、DP3 Merrillの画角では、正面からだとただの切り取りになってしまうので、斜めから構図にしました。絞りはF2.8開放です。街灯にピントを合わせています。こういうにぎやかな被写体の場合でも、きちっとフォーカスすれば、街灯がちゃんと浮き出ているように感じる。これはDP3 Merrillに搭載されたレンズが、良いレンズである証明でもあります。

DP3M-09
撮影場所は、建築家ジョセフ・ファンタ設計のアールヌーヴォー装飾で有名な、プラハ中央駅のホールです。少し前まではカフェが営業していたのですが、100年前に完成した当時の華麗さは失われ、今はもう廃墟同然となっていて、訪れる人もほとんどいません。撮影日は曇天で、向かい側にあるステンドグラスからの光も弱く(教会の中の光に近い感じです)、手持ちでの撮影を試みましたが、僕の力量ではブレを起こしていまうので、三脚を立てて撮影しました。絵としては肩の線にフォーカスを決めて立体感を狙い、奥の文字も読める程度にとF5まで絞りました。SIGMA Photo Proでの現像ではホワイトバランスを調整し、被写体の汚れが目立つ結果となりましたが、ほぼ現物に近い色を出す方向で現像しました。

DP3M-10
こういう俯瞰の全景図は「わかりやすいお約束の絵」とも言える一枚として、なんとか今回も撮っておかなきゃなと出発前からアタマには置いていました。撮影中盤にセイケさんが「今日は丘を登ってみようか」と仰ったので、汗をかきつつ坂を登り、さらに鉄塔の最上部まで上がってこれを撮ることが出来ました。1891年に作られたその鉄塔はエッフェル塔を模したもので1/5サイズで作られています。世界大戦中はソ連の電波塔としても使われ、チェコの厳しい歴史の一端の建物でもあります。さて、この塔の上から撮ったこの写真を見てみると、隅々までの微細さとも相まって、不思議な浮遊感も感じますが、実際に風に煽られて大きく揺れるという別の浮遊感の中で撮影しました(笑)。その揺れがブレにならないよう、シャッタースピード速めになるように、設定をISO100から200に変えました。絞りはF5.6です。この程度の日照具合でシャッタースピードが1/800秒ですから、おそらく日常で撮影するモードの感じかと思います。それにしてもこのDP3 Merrill 搭載のレンズ性能はすごいですね。中央部から周辺まで、びしっー!と一切の滲みを持たないこの描画。すべてが写ってますね。一眼レフや中版カメラを使っても、ここまでの描画は相当困難なのではないでしょうか。本当に驚かされます。

DP3M-11
プラハのトラムに乗って、窓越しに見る景色は、実際の目線よりも1mほど高いのでロケハンにはもってこいなのです。この日はトラムの17番に乗ってプラハ北岸を渡り、さらに北へと移動しながら、気になる場所を見つけたらメモっておいて、歩いて戻るというスタイルを試しました。途中、屋根が曲がったとても古い家を見つけたので、ヴォゾヴナコビリシの終着点まで登り、そこからゼンクロヴァ通りまで降りて来たところでセイケさんが撮影を始められました。人が住んでいると思えない古さでしたが、レースがかけられた内窓に花が飾られているのに気づき、セイケさんをほったらかして(汗)思わずこれを撮りました。花までに二枚の厚いガラスがあるので、あえて外窓から撮っているという構図で撮りました。絞りは開放F2.8でシクラメンにフォーカスしています。

DP3M-12
このベンチ、僕にとってものすごく重要な意味を持つベンチなのです。それはこの場所に行ってからセイケさんに教えてもらえたのですが、このベンチを撮られたセイケさんのプラチナプリントを僕は持っているのです。まさかプラハだったとは!このベンチなのか!と、思わず撮ったのでありました。セイケさんがこのベンチを撮られた時の逸話も聞かせていただいたのですが、それは胸に迫るお話でした(お許しが出たらまた書きます)。そんな裏側からの思いからか、この写真は露出を下げ、コントラストを強め、フォーカス部分を際立たせるなど、印象を強めるように現像でかなりパラメータを触っています。Photo Proをお持ちの方は、SPPからこのJPEGのEXIFを読み込んでみてください。ちなみにこのベンチの場所は僕だけの大切な秘密(笑)ということでお許しを。案外見つけやすい場所にありますので、どうかプラハに行かれたときに探してみてください。

DP3M-13
被写体はロレッタ教会の副門です。13番と14番は同じ場所で撮っていますが、13番は向かって右の副門です。F5.6で撮り、構図全体にフォーカスが来るように少し絞りました。色温度は素直に「日陰」で撮っています。ちなみに、これらの扉を僕が撮影しているとき、セイケさんは僕のすぐ後ろで天使の像にカメラを向けておられました。そして撮られた写真を見せていただいたら、天使の足の踵のところのクローズアップなのです。「ここに来ると、いつも天使が、どーせ僕たちは撮ってもらえないんだよねって言うんだ。だから、そんなことないよ、と、そういう気持ちになったんで撮ってみたんだよ」と仰るのです。このセイケさんの「心」に打たれてしまって、なんかもう泣きそうでした。

DP3M-14
この14番もロレッタ教会の副門ですが、これは入り口に向かって左の門で、赤い色が剥げてきている色と、その上の文様が13番の門よりも際立っていたので、扉に近づいて撮りました。13番よりも絞りを少し開けてF3.5で撮っています。現像でのコントラストは0.2程度とそれほど強めてはいませんが、ものすごい立体感を伴って記録されていて驚きです。SIGMAのカメラに搭載されているFoveon製Merrillセンサーは、こういう金属質のものを撮ると他にはない存在感を記録しますね。このロレッタ教会はプラハの代表的なバロック様式として有名で、観光客も多い場所ですが、僕たちの撮影は、そういった観光地を徹底的に避けながら進んで行きます。

と、ここまで書いてきましたが、ギャラリーには42枚もあって、まだまだ先が長いので、今日のところは、まずはここまでということで一旦公開します。ブログを書くのってけっこう時間かかりますね。続きはまた明日書きます。というか、こういう撮影後記的なエントリーって皆さんの役に立ってるのかどうかわかりませんが、自分的には、こうして撮影を振り返って、ひとつづつを言語化するっていうのは悪くないなと感じてます。引き続きよろしくお願いします。

→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 3

Friday, February 01, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 1

前回のエントリーでも書いたように、今回のSIGMA DP3 Merrillのコミュニケーションは、「カメラの作例」というものではなく、写真家の「作品」を見てもらいたい、という強い思いを持って取り組みました。その意図はカタログにも反映し、従来よりもより作家の意図が際立つようにすべてを細かくチューンしました。DP2 Merrill、DP1 Merrillのカタログと見比べていただければ、その見え方に僕の意図を汲んでいただけるかと思います。

さらに、これは特筆しておきたいことなのですが、SIGMA DP3 Merrillのサンプルギャラリーでは、今回、セイケ・トミオさんの実写写真をそのまま公開するという、前代未聞のことにチャレンジしました。プリントで勝負する写真家が、自分のオリジナルのデータをパブリックに配布するというのは、本来はありえないことなのです。ましてやその写真家が、美術館にコレクションされるような写真家「セイケ・トミオ」なのですから、まずそのことを記し、セイケさんに心から感謝したいと思います。セイケさん、ありがとうございます!

セイケさんがこのDP3 Merrillプロジェクトに対して、どれほど深い思いを持って携わってくださったか、これはまたしっかりと伝えて行きたいところですが、その思いの一端に、「カメラ」だけではなく「写真」の素晴らしさを伝えて行きたい、というこちらの思いに共感してくださったのだと思います。これはまた書きますね。

さて、SIGMA DP3 Merrillのサイトには数多くセイケさんの写真を掲載しました。DP3 Merrillに搭載されたシグマ独自のキャプチャ技術と、35mmカメラ換算で75mmというレンズの素晴らしさを理解して頂きたいだけでなく、さらに「シグマのカメラでしか撮れない絵がある」ということを知って頂けたらと思います。前置きが長くなりましたが、以下は、サンプルギャラリーの写真を撮った時のメモです。

DP3M-01
セイケさんが撮影された写真です。プラハ北部の庶民が住むエリアの小さな公園で撮影しました。トラムを降り、この公園を横切って、街の裏側に歩みを進めようとしていたとき、重たい雲間から微かな光が差しました。その瞬間、セイケさんはぴたっと足を止め、眼に映るものを見据えます。そしてこの枝に照準を合わせられました。この時のセイケさんのものすごい集中力は忘れられません。

DP3M-02
これもセイケさんが撮影された写真です。場所はプラハ北駅です。多くの人々が行き交い、混雑する夕方の駅の雑踏の中で撮られたのに、この写真には静けさがあります。また、建物、トラム、乗客、歩道を歩く人そして手前のガラス窓のグリッドと照明の映り込み。これだけ複雑な要素が絵として整然と整理されている。驚きです。ディストーションがどうだ…などの前に「写真」として見ていただきたい一枚です。

DP3M-03
これもセイケさん撮影の写真です。実はこの写真は「多様な質感が混ざったものとして撮ってみてもらえますか」と、僕からセイケさんにお願いして広場まで行って撮っていただいたものです。ですのでセイケさんの本来の眼から選ばれた被写体ではありません。それでもこの完璧さ。驚きです。脱帽です。DP Merrillシリーズのコンセプトである「いつでも作品としての写真が撮れる」を体現してくださるセイケトミオ、恐るべしです。

DP3M-04
セイケさん撮影の鉄扉の写真です。トラムから降りてナーロドニ通りを東に行ったところに大きな鉄扉がありました。扉自体にも景色がありましたがセイケさんは少し離れたところからじっと見つめ、この距離まで近づいて構図を決められました。鋳鉄製の取っ手を際立たせる薄い被写界深度の使い方に加え、菱型と縦線の構成。すべてが完璧です。ちなみにこれを撮影しているセイケさんの後ろ姿をFlickrにアップしました。

DP3M-05
ロンドンから来られたセイケさんとプラハで落ち合った初日、「まずあそこに行ってみたい」と仰るセイケさんのご希望でロケハンに向かったのがこの鉄橋でした。最初はなぜこんな朽ち果てた場所に行くのか意味がわかっていませんでしたが、翌日の午後、再度この場所に訪れて撮影。そしてこの写真です。この煙突と鉄橋のダイナミックな構図を見て僕は衝撃を受けました。写真家の「眼」とはこんなにもすごいものなのか!と。

DP3M-06
セイケさんとのプラハでの撮影は、とにかくよく歩きました。心に感じる撮るべき被写体に出会うまで歩き続ける。それがセイケさんのスタイル。そしてセイケさんの背中を追いかけながらの最終日、この光景と出会ったとき、「だからこそ撮れる写真がある」ことを深く学びました。また、まるでいまこれを見ているように感じるこの写真からは、朽ちた鉄格子、闇、そして向かい側からの光、と、この写真にセイケさんが込めた「心」に感じたものが伝わってきます。

DP3M-07
これも最終日にセイケさんが撮影された写真です。僕はこの写真を見た時、泣きそうになりました。写真家セイケ・トミオという人と一緒に過ごす時間が持てたことが、どれほど素晴らしいことか、心底からわかった瞬間でした。そして同時に、この石の階段を撮った一枚は、写真を撮るときに、構図や色やピントといったこと以上に、撮り手が「心」というものを持つべきなのだと、きっと見るひとに伝わる、と思いました。


セイケさんが、実際にDP3 Merrillで撮られたサンプルギャラリーでの原寸の写真データの公開は、以上の7枚になります。いま開催されているCP+に飾られたモノクロプリントのように、これらの写真も含め、サイトで使われた写真、また、カタログで使った写真、それ以外にも、今回、DP3 Merrillで撮られたプラハでの写真は、今後、セイケさんの手によってモノクロプリントに焼かれ、まったく違った表情を見せながら、世界のギャラリーでの個展や、写真雑誌などで発表されていくことになると思います。僕はそれを、とても楽しみにしています。

ということで、サンプルギャラリーでのセイケさんの写真の解説は、まずはここまで。明日以降は、DP3M-08番以降の、僕が撮った写真について書いてみたいと思います。

→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 2 へ

Thursday, January 31, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Debut

ティザーサイトでも告知していましたが、1月30日に、正式にSIGMA DP3 Merrillの発売日が発表されました。2013年2月22日に発売されます

この発売日決定の発表と、今日1月31日から始まった横浜でのカメラショー「CP+」に合わせて、これまでDP Merrillのシリーズで続けてきたコラム形式を踏襲したカタチでのスペシャルサイトと、実写ギャラリーを公開しました。

SIGMA DP3 Merrillというカメラ自体については、きっと、今後、さまざまな方々が、色々な面から評価をされて行くと思います。

僕はカメラ開発の中にいる人間ではないので、SIGMA DP3 Merrillという「カメラ」についての詳しい解説は出来ません。

僕はSIGMA DP3 Merrillというカメラを、この世にどのように紹介していくか。ただそこを手がけさせていただいただけですので、僕は「紹介するサイトが出来ましたよ。見てくださいね」とお伝えするしかありません。

ただ、このカメラは、シリーズのDP1 Merrillよりも、DP2 Merrillよりも、より強く、「写真」というものを際立たせていく力を持っていると思います。そして、その思いが、「作例」ではなく、「作品」を見せて行かなければならない、という、今回のコミュニケーションのコアコンセプトになっています。そして、その「作品」をどう具現化していくか…。そこで、セイケ・トミオさんという本物の写真家へのアプローチが始まりました。

SIGMA DP3 Merrillのサイトにある写真はすべてセイケさんが撮られた写真です(サンプルギャラリーの後半と、画角違いの写真は僕が撮りました)。

そのセイケさんの写真を、まずは楽しんでもらえたらと思います。

セイケさんが撮られた、この石畳の写真。そしてプラハ駅ホールのガラス窓の写真。我々が暮らしている街にでも、こういう場所は存在します。しかしセイケさんが撮ると別の世界が出現する。

セイケ・トミオという写真家が、なぜ世界で高い評価を受けているのか。美術館がパーマネント・コレクションとして買い上げていくのは何なのか。ロンドンのハミルトン・ギャラリーなど、世界最高峰の写真専門ギャラリーたちが、セイケさんの新作を心待ちにしているのはなぜなのか…。これらの写真を見るだけでも、その理由があきらかになってきます。

プラハで過ごしたセイケさんとの日々は、言葉にならないものを沢山経験しました。「写真」というものへの情熱。そして「写真」がどれほど素晴らしいか。そうしたことを本当に沢山学びました。それについては、あらためてこのブログに記して行きたいと思っています。

以下は今回のプラハでの撮影のサンプルギャラリーの撮影メモです。合わせてお読みいただけたら幸いです。

→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 1
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 2
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 3
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 4
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 5
→ SIGMA DP3 Merrill : 実写ギャラリー解説 6

→ SIGMA DP3 Merrill : オフィシャル ティザーサイト
→ SIGMA DP3 Merrill : オフィシャル スペシャルサイト
→ SIGMA DP3 Merrill : オフィシャル 実写ギャラリー


Sunday, January 27, 2013

Photo Pro: 現像での肌の作り方

SIGMA DP2 Merrillは人を撮るにはとても適したカメラと言えます。搭載されているDPレンズは35mmカメラ換算で46mmという焦点距離で、一般的に標準レンズとされる(人間の眼の見え方に近い)50mmに近い画角は、人物に向けての構図も作りやすく、またF2.8という明るいレンズは、開放からシャープな結像ですし、少し絞っても驚くような描画を見せます。

さらに、すべての光をRGB三色のフルカラーでキャプチャしているMerrrillセンサー(他社のカメラはモノクロセンサーです。本来のカラーで記録しているのはこのカメラ搭載のセンサーだけです)は、細かなディテールを見事に記録していきます。

ただ、このピクセルシャープな特性は、風景や静物などの被写体には素晴らしく向いていますが、人物、特に女性を撮ったときに、あまりにも微細にディテールを描きすぎて「ひどい!」と言われてしまうこともあります。実際にそこにあるものを撮り、記録する能力が高い分、毛穴やシミなども目一杯描いてしまうわけです(笑)。しかし、そういう場合でも、X3F(RAWモード)で撮影しておけば、現像段階でかなり肌の調子を整えることが出来ます。

では具体的に、どうすればいいのか、ということですが、これはひとつの提案ですが、風景などと同じようにRAWデータの現像で、むやみに色温度や露出、コントラストなどを調整し始める前に、まず「ノイズリダクション」という機能で肌の調子を整えてみましょう。

左に貼ったのは調整パレットの下の方にある「ノイズリダクション」部分のキャプチャです。この中の「色ノイズ」と「輝度ノイズ」の指定を変えるだけで写真の印象は大きく変わります。

この「ノイズリダクション」機能は、肌の調子を整えるために用意されたものではありません。本来は高感度撮影時に発生しやすいルミナスカラー(三原色のにじみのようなもの)などをソフトウェア的に処理するものです。

一方、女性の肌でいう「シミ」のような要素は、表面の肌の色の下層に濁ったくすみのようなものを伴っています。このくすみをデータ的にノイズという風に考えると、本来の使い方ではありませんが「ノイズリダクション」機能は、その低減に機能するのではないか。

僕はそう考えて、まず先に、こうした地肌の処理をできるだけ行なってから、色相やコントラストを考えるというプロセスで現像を行なっています。これはメイクアップアーティストがモデルをメイクしていく考え方と同じです。まずベースメイクを施し、肌全体を整えること。その後で、どの程度の光と影の印象を与えていくか、どう立体的に見せるか、という風に、最終的に仕上げたいイメージに近づいていくわけです。最初からコントラストや色相を調整して四苦八苦するよりも、このプロセスを踏んだ方が、最終的な仕上げへの意思決定にはずっと近道だと感じています。

さて、以下に貼った複数の写真は、「色ノイズ」と「輝度ノイズ」の二つのパラメータを最大に変えたところでのキャプチャです。すぐ下にある写真がノーマル現像です。その下に「ノイズリダクション」の指定値を変えたものを4枚貼りました。それぞれパレットのボタン位置と肌の質感を参照してみてください。肌の表情が大きく変わることがご理解いただけるかと思います。

とはいえ、写真にはそれぞれ違ったテーマがあり、写真に撮られる女性もさまざまです。ここで示していることがベストな方法とは決して言いません。それぞれに考え、それぞれに現像を試みてください。このブログエントリーは、「ノイズリダクション」という機能が、あまり使われていないようなので記してみました。この機能は、こうした肌の質感調整だけにとどまらず、景色の写真に対しても思いもかけない効果を生む場合もあります。きっと楽しいと思いますので、X3F(RAWモード)で撮影し、SIGMA Photo ProでのRAW現像で色々と試してみることをおすすめします。

ちなみに、この写真の女性は、2012年7月にDP1 Merrillのカタログ撮影のために訪れたオレゴンの牧場の女主人、ジーニー・カーヴァーさんです。この写真はDP2 Merrillで撮りました。強く、優しく、美しく、あらゆる気配りを僕たちに向けてくださった素晴らしい女性でした。






Tuesday, January 08, 2013

SIGMA DP3 Merrill : Teaser

SIGMA DPシリーズの最新機種として、中望遠レンズが搭載されたSIGMA DP3 Merrillが開発されました。2013年2月に発売される予定です。このカメラの開発が進んでいるという情報すらこれまで伏せられて来ましたので、今日の発表に驚かれた方も多いのではないかと思います。

僕の知るかぎりですが、実際のところ、今のMerrillセンサーに移行する前の初代DPシリーズが系譜を重ねていたころ、中望遠レンズを搭載したレンズ一体型のコンパクトカメラという構想は存在していました。同時にズーム機能も検討されていた記憶があります。しかしコンパクトネス具現化にあたって、困難な壁も少なくなかったのか、その後、この構想は耳にしなくなりました。それから3年後の今日です。そういう意味でも、このカメラは、シグマの「良いと思ったらあきらめない」という一種の頑固さのようなものが創りだしたオリジナリティの塊のようなものではないかと思っています。

そんなDP3 Merrillの今日の発表に合わせて、ティザーサイトを制作しました。写真は世界的に有名な写真家、セイケ・トミオさんによるものです。セイケさんは、僕がバリ島で撮影した初代DP2のカタログを手にしてくださり、そこでデジタル写真の可能性を感じてくださって、以後、シグマのカメラを使い続けてくださっています。

その縁もあって、今回の撮影を恐る恐るお願いしたところ、引き受けてくださいました。35mmカメラ換算で75mmに相当するDP3 Merrill搭載のレンズ特性を、見事に生かし切った写真は「さすが」の一言に尽きます。もっと沢山見ていただきたいのですが、それはまた次回に。どうぞ楽しみにしておいてください。また、セイケさんと共にロケで過ごした時間は、僕にとって得がたい経験を積むこととなった時間でした。それはまたこのブログに書きたいと思っています。

●追記:明後日、1月11日からセイケさんの個展「Light in Monochrome」が、ライカ銀座店サロンで始まります。この個展はシグマのカメラで撮影された写真ではなく、ライカMで撮られたものですが、本物の写真家が作り出す深淵なるモノクロームの世界に触れる絶好の機会ではないかと思います。よければ足をお運びください。