DP3 Merrillサンプルギャラリーの撮影メモ、第四弾。今日はDP3M-22番からです。
DP3M-22
DP3 Merrillのレンズにはマクロ機能がついています。マクロとは接写のことです。フィルム時代はマクロと言えばフィルム上に等倍での撮影が出来る前提のレンズを指していましたが、デジタルカメラになってからはセンサーサイズが色々出てきて、等倍ではない場合にもマクロという言い方をするようになりました。今は撮影倍率という言い方のほうが正しく伝わるのかもしれませんね。DP3 Merrill搭載DPレンズのマクロは最大撮影倍率1:3です。また最短で被写体に寄れる距離は22.6cmです。そういう数字を出してもイメージが湧かないと思うので、22番と23番はマクロの見本としてサンプルギャラリーに掲載しました。22番は昼食時にレストランでマクロテストをした時の一枚です。フォーカスは瓶の手前のハイライトに合わせ、F5.6まで絞っています。手前のテーブルの合焦具合を見て頂くと、被写界深度とボケ具合がわかるかと思います。
DP3M-23
23番もマクロの見本としてサンプルギャラリーに掲載しました。プラハから帰国してから、トランクの小袋にある色々な硬貨を混ぜて撮りました。ユーロだけでなく、オーストラリアドルとかインドネシアのルピーとか、昨年行ったモロッコのコインもありますね。中央右のフォーカスを合わせたのがプラハでの通貨「チェコ・コルナ(Koruna česká)」の20kč銅貨です。この20kčコインのサイズは、いま定規でちゃんと測ってみたら、直径が26mmでした。このサイズで、どれぐらい寄れるかの目安にしてもらえたらと思います。フォーカスはコインの20の数字下の「kč」のところに合わせています。絞りはF4.5です。F2.8だと奥のコインはかなりボケた感じになります。それにしても使い込まれたコインというのは、その痕跡がこんなにあるものなんですね。実はプラハでの撮影は氷点下が続く中でしたが、このチェコのコインは、お釣りなどで手渡されたときに不思議と冷たさをあまり感じませんでした。それはこのコインの無数の傷が、手に優しく馴染んだからなのかもしれません。
DP3M-24
これを撮影した日の前夜から冷たい雨が降りはじめ、早朝も小雨が残っていました。もちろん雨だからといって撮影中止ではありません。逆に、濡れたことによる輝きや、変化する景色を求めて、いつも通りにセイケさんと出発です。プラハには大きな公園や広場が沢山あります。それぞれに銅像が立っていたり、教会の前庭的な佇まいだったりと特徴があるのですが、この写真は街の中心部にあるカルロヴォ・ナームニェスティーのカレル広場で撮りました。朝の9時半ぐらいですから人影もまばら。セイケさんはベンチと柳の落葉にカメラを向けられます。次に遠景の構図に移られたので、僕は邪魔にならないように少し離れて見守ることにしました。しばらくして振り返るとこの光景。うひゃって感じです。この公園は道路が3本通るほどに縦に長く、川側には近代的なビルもあるので、オフィスから抜けだしてきた女性でしょうか。携帯で誰かを説得するように話しています。DP3M-18の時のようにカメラをぱっと構えて5枚ほど構図を変えながら続けて撮りました。絞りはF2.8の開放。オートフォーカスで撮っていますが、髪にビシっとピントが来ていて、これは絞り開放での解像感を見て頂くには良いかと思ってギャラリーに掲載しました。ちなみにこの写真は、現像では何ひとつパラメータを変えていません。まさに撮ったままでこの描写。驚きです。
DP3M-25
前にも書きましたが、プラハの街を歩いていると、どうしたらこんな質感になるのか、何があってこんなに剥げてるのか、ここでいったい何が繰り広げられたのかと、思わず思い耽ってしまうようなディティールを持つ壁に出会います。この壁もそのひとつ。積み重ねられた石だけでも何種類もあり、またそれぞれの朽ち方にも「時間」を感じます。これも絞り開放F2.8で撮りましたが、カサカサした壁面にフォーカスしているにも関わらず、思った以上に雨樋の持つ質感が出ていて、平面的な撮り方なのに立体感を感じる絵となりました。さらに、この写真をギャラリーにアップしたいと思ったのは、さまざまな「黒」の表現力です。ただ汚れた黒というものではなく、煤けた黒、湿度を持った黒など、それぞれの質感を感じる黒の描写力。煤の厚みの違いまで感じる。これがMerrillセンサーの実力ですね。
DP3M-26
この写真は、プラハ北駅から、南側に伸びるトラムの線路に沿って歩くとすぐのところにある古本屋さんの入り口脇の光景です。このあとの27番、28番も、同じウィンドウの光景です。古写真の飾り方に沢山のピンを打っている光景が珍しく、セイケさんに「ちょ、ちょっと撮ってもいいですかぁ」と、待って頂きながら(汗)撮りました。これらの写真の「写り具合」は、見て頂いた通りで、狙ったものが際立つ写り。さすがの描写です。それから、同じ被写体でこの26番、27番、28番と3枚続けて掲載したのは、こういう被写体に出会ったとき、「その場の雰囲気を含めて撮りたい」、「気に入ったものをマクロ的に寄っても撮りたい」という、実際に撮るときの意識の流れのままに掲載することで、DP3 Merrillのレンズの感じを掴んでいただけるといいなと考えたからです。どうでしょうか。イメージして頂けるでしょうか(汗)。
DP3M-27
単焦点レンズでの撮影は、自分から身体を動かしながら構図を決めなければなりません。動かずとも寄れるズームレンズは便利ですが、実はズームは被写体への角度は変えられません。ただ被写体に寄っていくだけです。ですので、ズームする前に「確定」した構図が決まっていなければ、撮れたようで撮れていない、もしくは、撮った気になれたけれど、後から見ると面白くない写真になっている、ということに繋がりやすいのです。一方、シグマのDPシリーズのように、カメラの焦点距離が決まっていると、まず画角と相談する(脳内)、寄るのか引くのか(身体を動かしています)、構図の中の要素の整理(微妙に動きつつ脳内)、垂直水平など(ド集中)、と、こういう身体性を伴いながら構図を摸索していくわけです(この感じは僕だけっすかね 汗)。こういうことを続けると、自分と被写体との深い対話という「経験」を積み重ねていくことが出来ます。そしてその先に「自分らしい写真」というものが見えて来るのではないでしょうか。
DP3M-28
この一連の写真の撮った順番は、27番のマリア様を撮ってから、全景としての26番を撮り、そのあとこの写真を撮っています。意識としては、先に角度のある構図で27番のマリア様を撮ったので、それとは違う構図を探したくなったのでした(セイケさんを待たせていると言うのに!)。そしてフラットな撮り方でコンポジション的に撮ろうと決め、マリア様よりも下にあって水平に撮れそうな、この女性の肖像写真に決めました。紙自体のザラッとした質感も撮りたかったのだと思います。構図を決めようとしたとき、肖像写真の女性の目線が正面ではなく向かって左を見ているなと思ったことを覚えています。ですので、直感的に構図をずらし、上と右に黒い部分を入れてリズムを作ろうという意識が働いたんだと思います。他人事みたいですが、スタジオで煮詰めながら撮ってるわけではないので、その時にどうだったか定かではありませんが、僕の思考回路はそういう風に動いたと思います。あと、これぐらい近い距離での手持ち撮影だと、腕も身体も微妙に揺れているので、どうしてもフォーカスが動きます。そういう時は「□」が三つ並んでる連写モードに切り替えて、とにかく同じ画角でシャッターを押し続ける。これで確実にフォーカスばっちりの一枚が撮れます。後にまた書きますが、ステンドグラスの写真はそれでゲット出来たのです(笑)。
今日もなんとか7枚分のメモを書くことが出来ました。続きますので、明日以降もよろしくお願いします。。
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DP3M-22
DP3 Merrillのレンズにはマクロ機能がついています。マクロとは接写のことです。フィルム時代はマクロと言えばフィルム上に等倍での撮影が出来る前提のレンズを指していましたが、デジタルカメラになってからはセンサーサイズが色々出てきて、等倍ではない場合にもマクロという言い方をするようになりました。今は撮影倍率という言い方のほうが正しく伝わるのかもしれませんね。DP3 Merrill搭載DPレンズのマクロは最大撮影倍率1:3です。また最短で被写体に寄れる距離は22.6cmです。そういう数字を出してもイメージが湧かないと思うので、22番と23番はマクロの見本としてサンプルギャラリーに掲載しました。22番は昼食時にレストランでマクロテストをした時の一枚です。フォーカスは瓶の手前のハイライトに合わせ、F5.6まで絞っています。手前のテーブルの合焦具合を見て頂くと、被写界深度とボケ具合がわかるかと思います。
DP3M-23
23番もマクロの見本としてサンプルギャラリーに掲載しました。プラハから帰国してから、トランクの小袋にある色々な硬貨を混ぜて撮りました。ユーロだけでなく、オーストラリアドルとかインドネシアのルピーとか、昨年行ったモロッコのコインもありますね。中央右のフォーカスを合わせたのがプラハでの通貨「チェコ・コルナ(Koruna česká)」の20kč銅貨です。この20kčコインのサイズは、いま定規でちゃんと測ってみたら、直径が26mmでした。このサイズで、どれぐらい寄れるかの目安にしてもらえたらと思います。フォーカスはコインの20の数字下の「kč」のところに合わせています。絞りはF4.5です。F2.8だと奥のコインはかなりボケた感じになります。それにしても使い込まれたコインというのは、その痕跡がこんなにあるものなんですね。実はプラハでの撮影は氷点下が続く中でしたが、このチェコのコインは、お釣りなどで手渡されたときに不思議と冷たさをあまり感じませんでした。それはこのコインの無数の傷が、手に優しく馴染んだからなのかもしれません。
DP3M-24
これを撮影した日の前夜から冷たい雨が降りはじめ、早朝も小雨が残っていました。もちろん雨だからといって撮影中止ではありません。逆に、濡れたことによる輝きや、変化する景色を求めて、いつも通りにセイケさんと出発です。プラハには大きな公園や広場が沢山あります。それぞれに銅像が立っていたり、教会の前庭的な佇まいだったりと特徴があるのですが、この写真は街の中心部にあるカルロヴォ・ナームニェスティーのカレル広場で撮りました。朝の9時半ぐらいですから人影もまばら。セイケさんはベンチと柳の落葉にカメラを向けられます。次に遠景の構図に移られたので、僕は邪魔にならないように少し離れて見守ることにしました。しばらくして振り返るとこの光景。うひゃって感じです。この公園は道路が3本通るほどに縦に長く、川側には近代的なビルもあるので、オフィスから抜けだしてきた女性でしょうか。携帯で誰かを説得するように話しています。DP3M-18の時のようにカメラをぱっと構えて5枚ほど構図を変えながら続けて撮りました。絞りはF2.8の開放。オートフォーカスで撮っていますが、髪にビシっとピントが来ていて、これは絞り開放での解像感を見て頂くには良いかと思ってギャラリーに掲載しました。ちなみにこの写真は、現像では何ひとつパラメータを変えていません。まさに撮ったままでこの描写。驚きです。
DP3M-25
前にも書きましたが、プラハの街を歩いていると、どうしたらこんな質感になるのか、何があってこんなに剥げてるのか、ここでいったい何が繰り広げられたのかと、思わず思い耽ってしまうようなディティールを持つ壁に出会います。この壁もそのひとつ。積み重ねられた石だけでも何種類もあり、またそれぞれの朽ち方にも「時間」を感じます。これも絞り開放F2.8で撮りましたが、カサカサした壁面にフォーカスしているにも関わらず、思った以上に雨樋の持つ質感が出ていて、平面的な撮り方なのに立体感を感じる絵となりました。さらに、この写真をギャラリーにアップしたいと思ったのは、さまざまな「黒」の表現力です。ただ汚れた黒というものではなく、煤けた黒、湿度を持った黒など、それぞれの質感を感じる黒の描写力。煤の厚みの違いまで感じる。これがMerrillセンサーの実力ですね。
DP3M-26
この写真は、プラハ北駅から、南側に伸びるトラムの線路に沿って歩くとすぐのところにある古本屋さんの入り口脇の光景です。このあとの27番、28番も、同じウィンドウの光景です。古写真の飾り方に沢山のピンを打っている光景が珍しく、セイケさんに「ちょ、ちょっと撮ってもいいですかぁ」と、待って頂きながら(汗)撮りました。これらの写真の「写り具合」は、見て頂いた通りで、狙ったものが際立つ写り。さすがの描写です。それから、同じ被写体でこの26番、27番、28番と3枚続けて掲載したのは、こういう被写体に出会ったとき、「その場の雰囲気を含めて撮りたい」、「気に入ったものをマクロ的に寄っても撮りたい」という、実際に撮るときの意識の流れのままに掲載することで、DP3 Merrillのレンズの感じを掴んでいただけるといいなと考えたからです。どうでしょうか。イメージして頂けるでしょうか(汗)。
DP3M-27
単焦点レンズでの撮影は、自分から身体を動かしながら構図を決めなければなりません。動かずとも寄れるズームレンズは便利ですが、実はズームは被写体への角度は変えられません。ただ被写体に寄っていくだけです。ですので、ズームする前に「確定」した構図が決まっていなければ、撮れたようで撮れていない、もしくは、撮った気になれたけれど、後から見ると面白くない写真になっている、ということに繋がりやすいのです。一方、シグマのDPシリーズのように、カメラの焦点距離が決まっていると、まず画角と相談する(脳内)、寄るのか引くのか(身体を動かしています)、構図の中の要素の整理(微妙に動きつつ脳内)、垂直水平など(ド集中)、と、こういう身体性を伴いながら構図を摸索していくわけです(この感じは僕だけっすかね 汗)。こういうことを続けると、自分と被写体との深い対話という「経験」を積み重ねていくことが出来ます。そしてその先に「自分らしい写真」というものが見えて来るのではないでしょうか。
DP3M-28
この一連の写真の撮った順番は、27番のマリア様を撮ってから、全景としての26番を撮り、そのあとこの写真を撮っています。意識としては、先に角度のある構図で27番のマリア様を撮ったので、それとは違う構図を探したくなったのでした(セイケさんを待たせていると言うのに!)。そしてフラットな撮り方でコンポジション的に撮ろうと決め、マリア様よりも下にあって水平に撮れそうな、この女性の肖像写真に決めました。紙自体のザラッとした質感も撮りたかったのだと思います。構図を決めようとしたとき、肖像写真の女性の目線が正面ではなく向かって左を見ているなと思ったことを覚えています。ですので、直感的に構図をずらし、上と右に黒い部分を入れてリズムを作ろうという意識が働いたんだと思います。他人事みたいですが、スタジオで煮詰めながら撮ってるわけではないので、その時にどうだったか定かではありませんが、僕の思考回路はそういう風に動いたと思います。あと、これぐらい近い距離での手持ち撮影だと、腕も身体も微妙に揺れているので、どうしてもフォーカスが動きます。そういう時は「□」が三つ並んでる連写モードに切り替えて、とにかく同じ画角でシャッターを押し続ける。これで確実にフォーカスばっちりの一枚が撮れます。後にまた書きますが、ステンドグラスの写真はそれでゲット出来たのです(笑)。
今日もなんとか7枚分のメモを書くことが出来ました。続きますので、明日以降もよろしくお願いします。。
→ SIGMA DP3 Merrill : Sample Gallery: 5 へ
毎回楽しみにしています。
ReplyDelete今回のも読み応え十分でした。
DP3 Merrill今から楽しみです。
毎日、約3,000字です。このまま行くと月刊誌の4P連載で、半年分ぐらい書く感じでしょうか。でも記憶の鮮やかなうちに書くことでの、シズルを感じていただけたら最高です。
DeleteDP3M-24、以前のコメントにも書かせていただきましたが、この髪の毛の描写には魂消ました。
ReplyDelete今まで使用してきたDP1,SD14と現行使用機SD15ではこれほどまでの精密な描写は出来ていません。もちろん技量の問題があるでせう凹。
DP3Merrillのレンズはかなり優れていると思います。75mmとい焦点距離は使い慣れていませんが、俄然興味が沸いてきました。♪
セイケさんの作例で目を奪われ、shinzoさんの文章で心を奪われて
ReplyDelete昨夜、DP3Merrillを予約してきました。
更新を心待ちにしています。
ありがとうございます。これ、いい写真ですね→ http://livedoor.blogimg.jp/slowkuno/imgs/7/1/71fa6138.jpg
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