Thursday, January 15, 2009

なんでアメ車はカッコ悪いの?

もう先があるのか無いのかサッパリ見えないアメリカの自動車業界。GMがクライスラーと合併を検討してて、系列まで含めると5万人ぐらいのレイオフか…というようなニュースも流れてきてるし、クライスラーとの話に入る前にGMはフォードとも話し合ってるから、一年後には「三菱東京UFJ」みたいに全部合体して「GMFC」っていう会社が出来てるかもしれないってのも否定できない感じにはなってる模様。そんな中で開かれたデトロイトでのモーターショー2009ですが、なんでアメリカの会社のクルマのデザインって、こんなにカッコ悪いんですかね…。上の写真はシボレーの「スパーク」。これが2010年に発売するニューモデルです!って言われてもねぇ。GMの北米事業担当のトロイ・クラーク社長は「シボレー・スパークは、抜群のスタイル、広さ、多様性を備えた車として、北米の超低燃費小型車部門に登場する。シボレーラインにスパークを加えるのは、GMが低燃費ブランドとして業界の先頭に立つことを信条としているからである(出典:carview)」と述べてるらしいんですけど、デザイン悪すぎませんか。このゴツゴツのどこか「抜群のスタイル」なんですかね。なんか、なんとかシボレーのイメージを踏襲してガッシリ見せたいという意識というか、このデザインからは逆に「クルマを小さくなんかしたくないんだよ」という本音が見えて来る気がします。

一方、GMの中では高級という位置づけのキャデラックですけど、「コンセプトカーのキャデラック『コンバージ』を公開した。モーター走行を基本にしたプラグインハイブリッドを積むラグジュアリーな2ドアクーペ」ってことらしいです。んで、デザイン以外のところで、ハイブリッドとか空力性能とか、とにかく環境に向けてやってることは素晴らしいと思うし頑張ってるんだなぁって思うわけです。だけどこれ欲しいかって言われたら「いらない」って即答します。つか、こんな「何かの冗談ですか?」っていう顔したクルマに乗りますかね。どこがラグジャリーですか。なんなんですか、このフロントグリルとでっかいキャデラックのバッジは。なんですかこの視界を悪くするエンジンスペースのもっこり感は。ありえないでしょ。横からの写真や、斜め後ろからの写真を見ると、「おー、デザイナーが描いたまんまの感じやなー」って思えるんですけど、この正面の顔とか見ると、いきなりフロントグリルの呪縛が出まくりで萎え萎え…。

こういうのを見てると、質問の仕方が間違ってたり、調査すべき内容そのものがずれてたりする「まーけちんぐりさーち」みたいな存在がプンプン匂うし、クルマ全体のフォルムやテールエンドの処理あたりは、空力性能などの制約からの必然で打ち消しようのない部分が多いので、会社の上層部とかが「もっとキャディラックな顔はないのか!」とか役員会とかでぎゃんぎゃん口出したりして、元々のコンセプチャルなデザインがずたずたにされてる気もする。逆に言うと、経営陣がそこしか口出せない人たちの集まりだから、こうも売れないクルマを作り続けてるんだと思うんだけど、間違っているかしら。

北米全土津々浦々まで強力な販売網を持ち、身勝手なデザインの新車を出しても先代からずっと家族ぐるみのお付き合いっていうセールスマンが既存顧客の買い替えを促しつつ負担の少ないローンを組んで「奥さま、素晴らしいですわー」で一定台数を売りさばき、若者向けにはピックアップやハマーみたいな「ものすっごいパワフルでございますー」ってことでHipHopなキャンペーンで「オレたち燃費なんてかんけーねー」世代をさんざん作ってきて、と。

だけどインテリジェンスのある人たちは、そんな馬鹿げた循環には乗らないし、「いいもの」って何なのかを誰よりも早く察知する。それはどこにあるのかと探したら、ラグジャリーはヨーロッパ、コンセプトはジャパン、ってことに帰着。その流れでこの「アメ車が売れません。返す気ないですけどお金貸してください」ってことかな。俺だったら数兆円の支援受けたら、速攻でポルシェとBMWのデザインチームを買収するね。とにかくフロントグリルの呪縛から抜け出さないと何も始まらない気がするけど、抜け出したら何も残らなかったりして。

4 comments:

  1. アメ車って何かすごく大きな「コンプレックス」がデザインに反映されてる気がする。(国としての)歴史がない分だけ、立派に見せなければならないというプレッシャーがデザインの線の力みにつながっているように感じているんだけど、どう?

    これにくらべるとヨーロッパ車って、型のチカラが抜けてるように感じます。日本車と違って「ひかりもの」の処理も上手い。

    takeda

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  2. あ、その「立派」っていう言葉はしっくり来ますね。アメ車にはそれが余計なものとして「付加されている」と。逆に言うと「立派」じゃないものってアメリカって不得意な感じがするなぁ。フォードの「カ」だっけ、なんかちっこいの。ほんとヘタだよね。同じサイズのクルマの中で、たぶん世界で一番かっこ悪いんじゃないかなぁ。

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  3. それと、やっぱりシボレーもキャディラックも「時代を超えて通用する」というブランドになりきれていないってことなのかも知れないね。引き継ぐ伝統と磨き上げるものがズレてるというか…。

    日本は20年前までは、クライスラーみたいなカムリとか、BMWっぽいブルーバードどうですか、みたいに、とにかく世界中のクルマを真似して安価なクルマを大量に作って国内市場を思いっきり拡大できたわけだけど、結局のところ、クラウン、スカイライン、フェアレディ、レガシーというような歴史のあるところに戻って「磨き上げる」系のブランドに帰着して、まぁそこそこ。

    ヨーロッパ車は確固たる引き継ぐものを持っているし、その「磨き上げ方」にブレを生じさせないから共感が生まれていく。MINIみたいなイギリス車を手に入れても成功させたのはBMWだけ。フォードはMINIよりも確固たるものを持っていたジャガーとか手に入れたけど「磨き上げる」んじゃなくてX-typeとか作って拡販の方に向けちゃって息が続かない。

    Appleとか新しいところからスタートするのは得意なのかもしれないけれど、アメリカは、そういう「磨き上げる」ともっと価値を生むっていうモノの扱いが不得意なのかもしれないな。

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  4. 「磨き上げる」ね。なるほど。


    takeda

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