Thursday, January 15, 2009

学校を作る発想

この不況での派遣村の話とかのニュースに触れると「失業は自己責任だろ」という意識は確かに生まれます。だって僕みたいなデザイナーって何の保証もありませんからね。安定なんて、そもそもありえないわけだし、とにかく必死で努力して毎日を過ごしながら今日まで生きて来ているわけですから、派遣村で「働くっていっても、なんでもいいという訳じゃないしぃ~」とか「気に入った仕事が無いんですぅー」とかグズグズしてる人とか見ると「おみゃーなんぼのモンじゃい!」みたいな感情は生まれてしまいます。努力しない奴は嫌いだし、お腹すいてんのに「これマズそうなので違うのください」って言うかー!みたいな感情です。

だけど、こういう事態を目の当たりにしたとき、いつも世界の貧困者への支援活動の実態の話を思い出して、駄目だ駄目だと。ちょっと待てよと。彼らを見てちゃいけないんだと。彼らのことだけ見て感情に捉われると間違うぞと。そんな感じで一層懸命、自分の感情を理性で引き戻そうとしています。

ソマリアの子供(左)& 国連スタッフ(右)たとえばアフリカなどで、旱魃が続いて、飢えて飢えてどうしようもない人たちっているじゃないですか。そういう人たちを見ると僕も「かわいそうだなぁ」と思います。そして誰かが情緒的なキャンペーンを開始します。「ほっとけない!世界にはあんな貧困があるのに自分たちはこんなに飽食でどうすんだ!すぐにでもできることをやろぅ!物資を送ろー!援助しよー!」という訴えです。それに多くの人が協力してお金や衣類や食料を送る…という支援ですね。もちろんこれは正義の活動だと思います。でもね、それは近視眼的な正義であって、どこまでも無責任と隣り合わせなんだよね。

僕は彼らに一番必要なのは衣類や食料じゃなくて「教育」だと思うですよ。そこまで困窮する前に「このままだったらダメだ。村ごとぶっ倒れるな」という予測を持てるようになればいい。その予測が立ったら即座にどうするべきかを考える知恵があればいい。政府や行政に保護を相談してみるとか、とにかく先を予測して試行錯誤するような思索を支えるのは、幾許かのお金や衣類や食料じゃなくて、やっぱり教育なんじゃないのかな。段階的・長期的な教育によるインテリジェンスの醸成。自分を社会と同時に考えられる知性を育む場づくり。そういうことの出発点として子供たちの学校を作るってコトが最優先なんじゃないか…と僕は前々から思ってきました。

だけど、そういう本当に必要な支援活動って地味なんだよね。教育環境を整えましょうって頑張って、それが軌道に乗ったとしても、その国に本当に貢献し始めるのには最低でも20年ぐらいかかる。一方、目の前には飢えた子供がいっぱいいるから、どうしてもそんな地味で悠長な施策より「手っ取り早く結果出そうぜ」となって、いつのまにか本質を忘れちゃうんだな。環境問題の刹那的な植林行為もまったく同じで、植えるまではすっごく盛り上がるわけ。だけど誰も植えた後のメンテナンスを段取りしないから、数年で元通りの砂漠に戻るという結果になるのがすごく多い。なにやってんだか、ってことです。

雇用の話でも、有効求人倍率が0.8を切っている今の日本の中で、どんなに派遣とか労働者を救済しろってミクロ視点で叫んでみても、そこに皆でどんなに手厚い対策をしてみても、そもそもの雇用機会を喚起するマクロ視点での企業の財務に向けた施策がなきゃ何も変わらないのは明白なわけ。でも、そういうマクロな視点ってわかりにくいから、今日の春闘の要求みたいに、正規雇用者の保護とベアアップを堂々と訴えて、組合側は本音のとこでは派遣とかどうでも良くて「ていうか、おまいら、いつから俺たちの仲間だっけ?」という態度になる。

誰もが怒ってる。誰もが不安を抱えてる。ったいなにやってんだと誰かに言いたい。自分は一生懸命やってきた。悪いのは誰だ。アメリカか?ヘッジファンドか?外資の証券会社か?日本政府か?官僚か?企業の上層部なのか?って、みんなそれぞれ思ってるわけです。でも、ちょっと考えれば、誰の責任でもないんだよね。これが今の社会の仕組みであって、その時代に生きているってこと。それは受け入れるしかない。さらに、そういう時代に、ただただ自己中心の欲深い自分がいて、その自分にはインテリジェンスが足りないだけなんですよ。

4 comments:

  1. 文中にいくつかリンクを追加した。色々考えさせられることは多いけど、やっぱり「近視眼的な正義」に単にコミットするだけでは本質は何も変わらないということを忘れちゃいけないと改めて思う。

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  2. おおお、「日銀、最大2兆円規模のCP買い入れを検討」とのニュース。そうそう。日銀もカッコ気にしてないでこういうマクロな施策をどんどん打ち出して欲しい。

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  3. すごく共感しました。
    私の夢は発展途上国で教師になることです。
    今22歳で院生なので30代には夢が実現していたらいいなと思います。
    今は下準備段階です。

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  4. みかんさん、ありがとうございます。素晴らしいヴィジョンをお持ちですね。感心します。やっぱり大切なのは、継続を支えるこちら側の意識の持ち方なんだと思います。自分を上に置いて物事を考えるのではなく、同じ目線に立つことがいかにむずかしいことか…。そこは僕も日々反省しています。

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