Wednesday, October 15, 2003

books

今日手にした一冊の本のように、一度は読むが何年も経ってから改めて読み返すという行為に及ぶ本は多い。また書店でそういう予感を持ちながら購入した本も少なくない。本は、この月日を越えて読み返すという繰り返しが幾度となく出来るので僕は本が捨てられない。いや正しくは、捨てられない本との出会いが多い、か。

本には、文字を紡いで原稿をしたため、序章からあとがきまで隅々に意識や思想を定着させようとした筆者の思いがある。それを読む僕が、10年経てば、それを読者として解釈し、理解し、咀嚼するために使う知識も経験も大きく異なってくる。当然、文節の合間から汲み取れることも大きく異なり、良い本は読むたびに違う奥行きを示してくれる。僕にとってこれは映画も同じだ。主題として描かれたことが、ある日突然に違った理解で脳裏に出て、改めて見直してみることがあるように、だ。

そして、それはデザインも同じなのではないか、と思う。僕がゲアトバウマンの作品に触れ、もの言わぬそれを凝視して読み解き、自分の中で再構築し、気づいたことを試し、作り、試し、作り、試し、作り、試し、作り…。そして何かが僕の中に残った。そして何かを読み解く力が強まった。そして、読み解こうとした思想をゲアト本人の口から説明され、自分の読解が間違っていなかったことを先日確かめ、大きな感動を覚えた。先のそれは、僕のそれとは比較にならないほど偉大な話として、建築家の安藤忠雄さんが、世界中を回り、もの言わぬ建築と対峙して自らの建築を組み立てられたことに近いことだったのかもしれない。

だがしかし、なによりも、モノや形あるビジュアルを通した表現ではなく、文字というものだけを紡いで、人の心を揺さぶり、何かを人の心に残していく作家たち。僕は自分の心に染み入る本に接するたび、彼らの仕事に心から敬服する。

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