リバーサルフィルムを使う普通の撮影ではカラーメータで色温度を測定し、フィルムに合わせて数枚のゼラチンフィルタをレンズの前に重ねて装着するという方法で色感調整を行う。だがそれは、その補正するフィルタが持つ濃度分だけ幕面に届く光は暗くなり、その分だけシャッタースピードを遅くせざるを得ない。これは静物が被写体の場合は問題ないがモデルの場合は半段程度でも影響が大きい。さらにAD的視点で言うと、要は濁った光が届く状態になるわけで、特に光源がタングステン系で弱い場合はボケ足に微妙に影響を与えることもあり、思ったような写真が上がらず半分喧嘩しながらカメラマンに教えられ、このへんの按配を僕は覚えた。
これは捨てカットの中の一枚だが、デイライト(当日の状況では6,000ケルビンぐらい)での色温度に合わせたまま、このテーブルの上にあるシャンデリアが持つタングステン光から降り注ぐ赤系の光(通常で3,000ケルビン台)に補正せずに撮影した。つまり、本来は、そのタングステンに対する補正のためにフィルタを重ね色みを相殺して白を出すわけだが、テーブル上にあるオレンジと、白が逆に転んで出る色のマッチをふと頭の中でイメージして補正せずの方が味のある絵ではないかと思って撮ったものだ。
本当はPKR64(実効感度50)のようなコダクローム系で撮影し、微細な画質にこだわりたいところだったが、今回は現像時間が短くて済むいわゆるエクタクローム系のフィルムで考えられるだけの無茶な撮影テストを重ねていた若い頃の経験が役に立った気がした。もちろんカメラマンと言う仕事の大変さは充分に知っているし、こういう感じで自分で撮影するというのは、ホントに今回のような緊急対応時だけにしようと思った。だけど、急な仕事というのは持てるスキルを総動員しろ!という側面もあり、案外楽しかったりもする。
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