Saturday, October 11, 2003

CANON EOS 10D

先日、ものすごく急ぎで作らなければならない仕事があった。その急ぎ具合は今日聞いて明朝には撮影しないとケツが間に合わないという超特急モード。カメラマンをキャスティングする時間さえなく、久しぶりに自分で撮影することにした。曇天を懸念してストロボの手配まで終えて撮影に臨んだが、幸い晴れたので約30カット(実質160枚)をデイライトでスピーディに撮影することが出来た。

さて、その時に、使ったカメラがCANONのEOS 10D。このカメラで、本気というか仕事で使うクオリティで、という意識で撮影したのは初めてだったが、購入してから数ヶ月、特性を色々試して来ていたので苦もなく撮影できた。この撮影で、デジタルだからこそでいいなと思ったのは色温度補正がデジタルで出来る部分だった。

リバーサルフィルムを使う普通の撮影ではカラーメータで色温度を測定し、フィルムに合わせて数枚のゼラチンフィルタをレンズの前に重ねて装着するという方法で色感調整を行う。だがそれは、その補正するフィルタが持つ濃度分だけ幕面に届く光は暗くなり、その分だけシャッタースピードを遅くせざるを得ない。これは静物が被写体の場合は問題ないがモデルの場合は半段程度でも影響が大きい。さらにAD的視点で言うと、要は濁った光が届く状態になるわけで、特に光源がタングステン系で弱い場合はボケ足に微妙に影響を与えることもあり、思ったような写真が上がらず半分喧嘩しながらカメラマンに教えられ、このへんの按配を僕は覚えた。そのあたり、実はデジタルカメラでの色温度処理はビデオカメラでの撮影でホワイトバランスと呼ばれる処理ができる。それは被写体にあたっている色温度を、その場にある「白」を一度撮影し、それを基準に全体の色調整を図るという方法だ。露光量が変わらないのもありがたい。もちろんカメラで細かく設定できるが、先に複数のホワイトモードを作っておくと時間を無駄にしない。

これは捨てカットの中の一枚だが、デイライト(当日の状況では6,000ケルビンぐらい)での色温度に合わせたまま、このテーブルの上にあるシャンデリアが持つタングステン光から降り注ぐ赤系の光(通常で3,000ケルビン台)に補正せずに撮影した。つまり、本来は、そのタングステンに対する補正のためにフィルタを重ね色みを相殺して白を出すわけだが、テーブル上にあるオレンジと、白が逆に転んで出る色のマッチをふと頭の中でイメージして補正せずの方が味のある絵ではないかと思って撮ったものだ。こういうふと思ったことをさっと出来る上に、その効果の状態を、小さいとは言え、カメラの裏側のモニタでその都度確認できるのは、やはりデジタルカメラならではの機能と言える。

本当はPKR64(実効感度50)のようなコダクローム系で撮影し、微細な画質にこだわりたいところだったが、今回は現像時間が短くて済むいわゆるエクタクローム系のフィルムで考えられるだけの無茶な撮影テストを重ねていた若い頃の経験が役に立った気がした。もちろんカメラマンと言う仕事の大変さは充分に知っているし、こういう感じで自分で撮影するというのは、ホントに今回のような緊急対応時だけにしようと思った。だけど、急な仕事というのは持てるスキルを総動員しろ!という側面もあり、案外楽しかったりもする。

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